このところのコロナウィルスのことで気持ちがもやもやしていたのでこのノートでメッセージを募集したところ、早速世界中の方々からのメッセージをいただき、翻訳しながら読んでいます(うそです)。
やはりみなさんも同様にもやもやしているようで、自分だけではないと思うとそれだけで少しホッとしました。ありがとうございます。
お返事が出来るかもしれませんと書いた手前もあるので、しばし番外編を継続しようと思います。
始めかけた子供のトイトレ(トイレのトレーニング)をトイレットペーパーの買占めで断念した方、人数の少ない特別支援学校まで休校にする必要があるのか?と考える育児施設にお勤めの方、病院に入院している家族との面会が制限されてしまい寂しい思いをしている方、ひたすら子供のことが心配な方など、いろいろな思いを読んで、なるほどそういうこともあるのかと自分の視野の狭さを実感しています。
みなさん、本当にがんばっていて頭が下がります。みなさんのお子さんたちはきっと年頃になっても盗んだバイクで走り出したりはしないはずです。
その中でも心に残ったメッセージがありました。
「日に日に落ち着かなさが増したのはウィルスのせいではないと分かりました。(中略)ウィルスよりも人間が怖くなってきました。」
マスクや紙製品の買占めや高額転売、デマや誹謗中傷などを目の当たりにしてそう思ったそうです。
なるほど、ウィルスよりも怖いのは人間の方である、という気持ちには納得です。
「いつどこでうつるかわからないものの恐怖にとらわれると、人間は皆余裕がなくなって、他人を思いやったり想像力を働かせることができず、自己中心的になったり自分の利得ばかり考えるようになる、その恐ろしさを目の当たりにして、私はとても失望したというか、悲しくなりました。」
そして、こんなことで落ち着きをなくすのは、自分が弱い人間だからだ、と思ったそうです。
自分の率直な意見は「そりゃそうだ」です。
今の状況でこんなふうに感じてしまうのは、当然のことだと思います。日々流れてくる大量の情報の中には、嘘か本当かわからないものや、ひたすら不安を煽るようなものもたくさんあります。失望したり悲しくなったりすることもあるでしょう。
自分も近所の薬局で紙オムツまでもが品切れ(しかもLサイズのパンツタイプが)だったと聞いた時の失望感はただならぬものがありました。こんなことならもう少し余裕を持って買っておけば良かった、もし紙オムツが切れてしまったらどうしたらいいのだろうかと思うと、一瞬誰も知らないどこか遠い国へ行ってしまいたくなりました。
しかし、だからといって自分の心が特別に弱いと決めつけるのはいささか乱暴な気もします。弱いというよりは、「ちょっと繊細」くらいでいいんじゃないでしょうか。
それよりも、この方の人の心の仕組みに関する洞察力が素晴らしいと感じました。
世の中にはいろんな人がいますが、問題になるような行動を引き起こす大きな要因、それは恐怖や不安、怒りや嫉妬というネガティブな感情です。どんな人だってそういう感情に囚われてしまったら何をするかわかりません。台所に出現した黒くて素早く動くヤツへの恐怖心のために部屋中を洗剤と殺虫剤まみれにしてしまったことのある自分も同じです。
たった一匹のヤツのためにそこまでの事をするのは圧倒的に不合理だし、適切な対処とは言えません。完全に正気を失っているのです。そしてそんな自分を責めてしまうこともあるでしょう。
こうなるともう本当に誰も知らないどこか遠い国に行ってしまいたくなる気持ちが募るばかりで、これはあまり良い状況とは言えません。
そんなわけで、実は今自分たちに必要なのはウィルス対策と合わせた「感情のコントロール」なのではないかと気がつきました。
子育ては養育者の生活の安定と安心が土台になっているということは書きましたが、それはすなわち「心の安定と安心」とも言えると思います。何事もない通常営業の時でさえ子供の機嫌はコロコロ変わるし、養育者はそれにぶんぶん振り回されるわけで、うまくいかないことや腹が立つことは日常茶飯事です。もしそれにうまく対応する方法を見つけられたら、どんなに心強いでしょうか。
そんなわけで、今回はみなさんの「気持ちのコントロール術」を募集したいと思います。特に育児を経験し、それを乗り越えてきた諸先輩方からのメッセージをいただけたらうれしいです。
自分もツアーが始まりましたが、この先も中止や延期になるものが出てくる可能性は否めません。どうなることやら不安な気持ちもありますが、この経験を何か役に立つものにしたいと考えています。
(by 黒沢秀樹)
☆ ☆ ☆ ☆
※ホテル暴風雨は世界初のホテル型ウェブマガジンです。小説・エッセイ・漫画・映画評などたくさんの連載があります。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内> <公式 Twitter>