SNSやオンラインコミュニティではお知らせしていたけれど、先日12月5日のライブ後は自主的な育休期間を取り、表立ったアーティスト活動はしばらくお休みをいただくという決断をした。
もちろん他にも様々な要因はあるけれど、とにかく今しかない子どもとの時間を大切にしたいという気持ち、そしてこの育児ノートの書籍化に注力したいということも大きなテーマのひとつだ。
そうは言ってもまだまだやることは山積しており、育休をとっても手当が出るような身分ではないのでもちろんこれまで通り裏方的な仕事は続けることにはなると思うが、ひとまずこの育児ノートが来年の自分の活動の主軸のひとつになることは間違いない。育児中の方やこれから育児をする方の息抜きや、育児の経験や自分の子ども時代を懐かしく思い出してもらえるようなノートにできたらと考えている。
そんな中むかえた今年のクリスマス、一昨年から「サンタはいる」ということになっているので子どもはすっかりその気になっている。しかし立て続けに様々なことが重なりクリスマスイブの夕方まで全く時間が作れず、どうにかギリギリでネット通販というトナカイを利用してサンタにプレゼントを届けてもらい、息子の仲良しのお友達家族と一緒にクリスマス会をする算段をした。
友人家族たちの力を借り、ケーキやチキン、お菓子の家などの準備をお願いし、ようやくクリスマス会の始まりである。
もしもプレゼントが間に合わなかった場合も想定し、「今年はサンタさんちょっと忙しいらしいよ」などと前振りをしつつもどうにかクリスマス会の予定を調整することが出来たことに、正直ホッとした。
ひとまず大人用のサラダや前菜を作りながら乾杯をしたところで、事件が起きた。
さっきまで元気に遊んでいた息子が、盛大に吐いたのである。
子どもの胃腸炎が流行っているという話は耳にしていて、息子のお友達のひとりも前の週にかかっていたことも知っていたが、最悪のタイミングでそれはやってきた。
ここからは緊急事態宣言の発令である。ウイルス性胃腸炎の恐ろしさはまだ息子が赤ちゃんだった頃のクリスマスに経験済みで、大人に感染すると「周回遅れ」でダメージがやってきて年末年始の時期にどうにもならない状況に追い込まれることは目に見えている。
遊んでくれていたお友達家族にもすぐさま現場から隔離、退避をしてもらい、換気、消毒、吐いたものや衣服、その周辺を全てまとめて処理し、その間にも元気になったと思いきや再び吐く子どもをトイレに連れて行き着替えをさせ、少量の水を時間を空けて与えて様子を見てようやく落ち着いたところでベッドにバスタオルを敷き詰めて休ませた。
翌朝のクリスマス当日、サンタクロースが自分が欲しかったプレゼントを届けてくれたことを知った息子は大喜びをし、テンションが上がってまた一度吐いたが、おなかは空いているようで「何か食べたい」とずっと言っている。
この状況で食欲がある息子に驚きつつも、「おなかがびっくりしてまた吐いちゃうから、少しずつね」と少量のすりおろしたリンゴやバナナ、トーストなど負担にならないものを時間を空けて食べさせ、その間はお気に入りのアニメをなんでも見せて気を紛らわせた。
嘔吐が収まって今度は「うんち」である。「ちょっぴり出ちゃった」という言葉に慌ててトイレに連れて行くと、やはりお腹をこわしている様子である。覚悟をして臨むと、出てきたのは思いがけずしっかりとした、大人顔負けの大きくてきれいなものだった。思わず「なんでやねん!」という言葉が心の中で浮かんだが、とにかく悪化していないことに胸を撫で下ろした。
夜になり、その後も「何か食べたい」と言い続けるのでその度に少しずつ消化の良いものを与えて様子を見ていたが、おもちゃで遊んだりアニメを見たり楽しそうにしていて、ふと振り返るとまたソファーで逆立ちをしていた。
「ウソでしょ?」という言葉がまた心の中で浮かんだが、逆立ちができるようになったならもう大丈夫か、と少し肩の力が抜けた。
寝る前に最後のゼリーを少しだけ食べさせていると、息子がつぶやいた。
「ラーメン食べたい。。。」
「え。。。? 今なんて言ったの?」
「ラーメン食べたいっ」
子どものスピード感にますますついていけなくなっている自分を実感したクリスマスだった。
(by 黒沢秀樹)