子どもの未来は子どもが作る

このところの息子は新しい言葉をどんどん覚えて使い始め、会話での表現力が著しくアップしている。
ある日はトイレに座るとおならが出たのだが、「大きなクラクションみたいなおならだね」と自分のおならをクラクションという比喩を使って表現していた。
うんちにもそれぞれ形や大きさによって違いがあるらしく、最も貫禄があるものが「王様うんち」その後に「父さん」「子ども」「赤ちゃん」と続く。規格外の立派なものが出た場合「女王陛下」という位があるらしいのだが、自分はまだ陛下にはお目にかかったことがない。そもそも「女王陛下」なんて言葉をどこで知ったのか謎だが、きっと何かのアニメの中に出てきたのだろう。
そしてしばらく前から遊びの中に自分で作り上げたオリジナルのストーリーを設定し、そこに参加させようとする。主に「〇〇ってして」「〇〇って言って」というもので、これを自分は「〜して期」と呼んでいる。

「アリさん(指をアリに見立てて)てくてくして」

「つかまえるぞーって言って」

「にがさないぞーって言って」

「にげられたーってして」

「たいへんだーってして」

主にひとつのシーンにこのくらいの分量の流れがあり、それを何回も繰り返す事になるわけだが、そのたびにこちらはリクエストに応えて指定されたセリフを言う事になる。主にお風呂などで行われるこの稽古はなかなかに厳しいものがあり、疲れ果てて気を失いそうになっている時に細かい指導が次々に入るのでだんだんセリフも棒読み状態になってくるが、かまわずどんどん直しが入る。
息子はちくわが好きなのだが、先日は「ちくわコンテスト」という謎の行事の説明をされてそこに参加し「ちくわトロフィー」を受け取ることになった。子どもの想像力というのは本当に自由である。
さらにある日お昼寝の時にカーテンをしっかり閉めろという指示が来たのでどうしてか尋ねたら「夜行性なんだよ」という突拍子もない答えが返ってきて驚いた。

「え?夜行性なの?!」
「うん、夜行性なんだよ。だから暗くないといけないんだよ」

養育者である自分自身がずっと夜型の生活をしてきたことを考えると息子が夜行性であっても不思議ではないが、この言葉もアニメか絵本か、もしくは最近手に入れた図鑑から得た情報であると思われる。

話は脱線したが、子どもは日々の日常会話、アニメ、絵本、図鑑、そしてインターネットなどからどんどん新しい情報を吸収している。世の中を取り巻く状況の変化によって学校でもオンラインで授業ができるようになっているらしいが、スマートフォンやタブレットが日常的なインフラになったことで生まれてくる様々な問題もあるだろう。
自分の子ども時代はファミコンなどのテレビゲームがその代表で、ゲームに夢中になりすぎて外に遊びに行かなかったり、深夜までのめり込んだりした記憶のある方々も多いのではないだろうか。しかし、結果それが友達との共通言語になったり、子ども目線でのコミュニケーションツールとしてはかなり有効だったのではないかと思っている(自分はゲームはあんまりしなかったけど)。
「テレビばっかり見てちゃダメ」「ゲームは1時間まで」「マンガばっかり読んでいないで勉強しなさい」などは昔からよく言われていた定番のセリフだが、これからはそれがスマホやネットに変わることになるのだろう。

先日子どもを歯科医に連れて行くと、診察台に大きなモニターが正面と天井にまで設置されており、診察の間子どもに自由にYouTubeを見せて気を紛らわせるという状態になっていたが、こんな夢のような世界は自分が子どもの頃には想像もできなかった。
少なくとも、養育者である自分が経験したことのない新しい現実が目の前にあるわけで、これを子どもたちがどのように未来へ繋げていくのかは全く予想ができない。
しかし、時代が変わっても変わらないものはきっとある。
食事の支度など手が離せないことをしている時にひとりでアニメを見ていると、「父さん、一緒に見ようよ」と手を引かれることがよくある。子どもはひとりで楽しめることが増えたからといってそれで満足しているわけではなく、基本的には誰かとその楽しさを共有したいのである。
子どもの成長につれ、何かにつけ「もうひとりで出来るでしょう、自分でやって」などと言ってしまうこともあるが、テレビでもYouTubeでもゲームでも、やみくもにダメというのではなく、ひとまず子どもと共有していくことが大切なのではないかと思っている。きっと自分たちがテレビやゲームに夢中になっていたように、これからのいわゆるデジタルネイティブ世代はそれをうまく取り入れて活用していくことになるのだろう。
子どもの未来は子どもが作る。しかし、その土台になるものは養育者と子どもの信頼関係にあることは、これからも変わらないと信じたい。

(by 黒沢秀樹)

『できれば楽しく育てたい』黒沢秀樹・著 おおくぼひでたか・イラスト

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※編集部より:全部のおたよりを黒沢秀樹さんが読んでいらっしゃいます。連載のご感想、黒沢さんへの応援メッセージなど何でもお寄せください。<コメントフォーム
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