ぼくは持込みから絵本作家になった。
いくつかのダミー(絵本の試作品)を作り、それを持って出版社を回ったのだ。
15社くらい回って、福音館書店と小峰書店だけがいい返事をくれた。だからぼくの最初に刊行された6冊のうち4冊が福音館書店で2冊が小峰書店だ。この2社で絵本作家にしてもらったと言っていい。
(小峰書店からの2冊目は『たまごのカーラ』絵・あべ弘士 たまごのカラが旅に出る話)
絵本作家への道として持込みがコンペより優れている点は感想が聞けることである。コンペは入選すればいいが、落選した場合自作のどこが悪かったのかまるでわからない。問題点がわからないまま直すというのは無理がある。
一方、持込みなら必ず何か意見・感想がもらえる。それには納得いくものもいかないものも当然あるが、自分の頭の中だけで考えていたところに他者の視点が入ってくることはとても大きい。
ぼくは絵本教室に通ったことはないのだが、代わりに持込みがぼくにとっての学校だった。
同じ作品を何人もの編集者に見てもらった。ボツになったからしかたなく次に行くということを繰り返したからだ。すると自然とわかる。一つの作品に対してじつに様々な見方がある。人によって言うことが180度違ったりする。
絵本に一つの正解などない。絵本を作っている人たちはそれぞれ自分の絵本観を持って、それに沿って考えているらしいことを知った。
当時(1998~2001)絵本を持込むのは比較的容易だった。知らない編集部にいきなり電話しても、気持ちよく会ってくれるところが多かった。
残念ながら今はずいぶん状況が違う。多くの社は、郵送のみ受け付けるかまったく受け付けないかで、会ってくれるところはとても少ないらしい。
理由ははっきりしている。絵本作家志望者が増え、持込みが増えたからだ。ただでさえ忙しい編集者はとてもぜんぶに対応してはいられなくなったのだ。
郵送でも見てはもらえるだろう。しかし感想がもらえる可能性は低い。すると持込みのメリット、コンペよりいい点は消えてしまう。
現在、一般論としては持込みよりコンペの方がお勧めかもしれない。
ただ、じつはぼくのころでも純粋に持込みでデビューした人は多くはなかった。自分がそうだから同じような人が多いかと思っていたら、案外そうでもないことがだんだんにわかった。
「純粋に」とはどういうことか。それは次回に。
(by 風木一人)
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