『だくちるだくちる…はじめてのうた…』色彩のいざなう心の旅。時間と空間を超える豊かな感情体験。

『だくちるだくちる…はじめてのうた…』
(V・ベレストフ・原案  阪田寛夫・文 長新太・絵 福音館書店)

はるか昔の地球。ひとりぼっちで生きていたイグアノドンが初めての友達と出会います。友達は小さな翼竜プテロダクチルス、「だくちるだくちる」というタイトルはその鳴き声からとっています。

表紙を見てもわかる通り、長新太さんは主人公のイグアノドンに目も鼻も描いていません。のっぺらぼう。それなのにイグアノドンの感情は、さびしさも、うれしさも、痛いほどに伝わってきます。さびしいときは足の先まで冷たくなり、うれしいときはしっぽの先まで燃え上がるのです。

この絵本は色というものがどれほど人の心を揺さぶる力を持っているかを証明した作品ともいえるでしょう。イグアノドンの心情とバックの景色が見事に溶け合い、ページをめくるたび息を呑むばかりの情感があふれだします。

原案者のベレストフはロシアの詩人で、考古学者でもあるそうです。詩人の情熱と科学者の理知の融合が、このような稀有な作品の源泉となったのでしょうか。

世の中には、力のある人が集まってなぜだかロクでもないものを作ってしまう、などということもあるものですが、「だくちるだくちる」は正に傑作、3人の素晴らしい才能の結晶といえます。

だくちるだくちる

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