『よっ、おとこまえ!』(いがらしあつし・作 絵本塾出版)
今年6月に出たばかりの、いがらしあつしさんのデビュー作です。
絵本塾カレッジ第1回創作絵本コンクールの大賞受賞作品でもあります。じつは私もこのコンクールの選考委員を務めているのですが、1次審査のときから『よっ、おとこまえ!』の活きのよさはひときわ目立っていました。
とうもろこしの三人組が「美味しく食べてもらおう!」とがんばる話なのですが、それを「おとこまえになる」と表現したのがポイントです。
子どもたちは「おとこまえ」という言葉になじみがないでしょう。でも、だからこそ効果的なんですね。以前ご紹介した『きょだいな きょだいな』(長谷川摂子・作 降矢なな・絵)の場合と同じです。知らない言葉ほど、うまく使えば新鮮で魅力的なのです。
「おいしくなる」でも「かっこよくなる」でもなく、「おとこまえになる」という個性的な言葉を使ったことで、三人組のすかっと明るいキャラが見事に表現されました。
表紙を見てお気づきになったでしょうか? 真ん中のとうもろこしは両側のとうもろこしとは色も形も違います。これにはちゃんと理由があるんです。私はこの絵本を読んで初めて知りました。編集を担当された飫肥糺さんによる後書きがついていて、よく知っているつもりだったとうもろこしの意外な面を知ることができます。
新人は、絵本の世界に何か新しい風を吹きこんでこそ新人でしょう。いがらしあつしさんの作品にはユニークな発想と絵の勢いがあふれています。これを生かしてぜひ2作目3作目と私たちを驚かすような絵本を発表していただきたいものです。
※絵本塾カレッジ第2回創作絵本コンクール、作品募集中です。締切は8月15日。詳細はリンク先で!
(by 風木一人)
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