【 魔のウィルス 】20

【 集合意識パワー 】

BBはときどき、深刻なウツ状態に陥るらしい。
「自分では止められないのか?……タロットカードは救ってくれないのか?」
「無理な注文というものだろうね。タロットカードは万能じゃない」
「予兆みたいなものはあるのか?」
「わからん。……今回は瞑想状態のときに、ついうっかりと集合意識につながってしまったらしい」
「ははあ、読めた。その集合意識というのが、負の意識のかたまりみたいなものだったとか」
「そのとおり」
「日本で言えば浮遊霊とか呪縛霊につかまったみたいな話だな。……で、その集合意識はその辺にフワフワと浮かんでるのか?……やばいっ、と思った瞬間に逃げられないのか?」
「どうなんだろうね。オレが聞いた話では、逃げるもなにも、気がついたらもうその中にいた。そういうのらしい」

前々回「魔のウィルス18」で取り上げた「集合意識」とはなにか。初めて聞く人もいると思うので、私が知る範囲で簡単な説明をしたい。
「集合意識」は精神世界、スピリチュアルな話、そうした分野に興味がある人の間では、なかば常識的な、当たり前の通念としてよく使われる言葉である。個人の意識が、いつしか大勢の意識へと拡大してゆく。それがついに「社会の意識」となったとき、とてつもないエネルギーを内包することがある。そのパワーを利用し、操作しようとする試みも太古から行われてきた。そういう考えである。
(追記)私はこの「集合意識」はスピリチュアルな分野特有の言葉だと思いこんできた。しかし最近読んだ心理学の本にも「集合意識」が出てきたのでちょっと驚いた。言葉は同じだが、意味合いは(当然ながら)若干異なるようである。

「個人の意識なんてバラバラじゃないか。それがなんで大勢の意識になっていくんだ」と思われたかもしれない。
たとえになるのかどうかわからないが、以前、(スピリチュアル系)民俗学の本を読んでいてちょっと面白かったのは、「雨乞い」の話だ。世界中で太古から行なわれてきた「雨乞い儀式」は、単に「雨を降らせたまえ」と神に祈るだけの集団行動だろうか。そうではないというのだ。大勢の人が同じ願いを共有し、それを共振させる場を設ける。すると集合意識が発生する。そのエネルギーは強力な「螺旋(らせん)振動波」となり、空中に浮かぶ水滴と共振する。そしてついには雨となる。
なかなかファンタジックな話である。映画「アバター」でも、終盤にいかにもそうしたパワーを連想させるようなシーンがありましたね。

この「雨乞い」でちょっと余談。私が住む岐阜県の村には周囲にいくつか山があるが、その中でも笠置山(標高1128m)には謎めいた話がいくつかあり、なかなか興味深い。
そのひとつがペトログリフ(古代岩刻文字/なおよく言われるペトログラフは岩絵であり文字ではない)。
この山にはじつに数多くの巨岩がゴロゴロとあるのだが、巨大な三角岩にクギでひっかいて刻んだような古代文字が残っている。それは5000年以上も前に記された文字であり、「水を我らに」という意味だとペトログリフの研究者は考えている。つまり「雨乞い儀式」でパワーを得るための文字だというのだ。一説によればこの文字が記された当時、何百もの人間がここに集合し、雨乞い儀式を行い、天に向かって叫んだという。まさに「集合意識パワー」を連想させる話である。

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【 カタコンブ 】

さて話を戻そう。BBをウツにさせた集団意識は、やはりというか「COVID19」感染による不安、恐怖、そうした意識の集合体だったようだ。
「つまり意識して作られたものではなく、自然発生的にできたものだと?」
「まあそうだろうね」
「それがなにか悪さをすることもあるのか?」
「あるらしい。それを静かに考えるために、シチリア島に行ったらしい」
「シチリア島?……自分の部屋でふさぎこんでいるんじゃないのか。バラを持って様子を見に行ったアホな男もいるようだが」
「やかましい。とにかく部屋を出てシチリア島に行ったらしい」
「なんでシチリア島なんだ?」
「パレルモという町の教会にカタコンブがある」

カタコンブ。「地下墓地」とか「地下納骨堂」とか言われる。イタリアのシチリア島まで行ってわざわざカタコンブを見る人はあまりいないだろうが、パリにも「カタコンブ・ド・パリ」と呼ばれる場所があり、こちらは「パリ見物の機会に」ということで行った人もいるかもしれない。ただし通常のツアーではまずありえない。おびただしい数のドクロ(もちろん本物)や骸骨が壁面にはめ込まれるようにしてぎっしりと並んでいる。その数、ざっと600万人。そういう場所である。

……………………………………    【 つづく 】

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