韓国政府と報道機関を追求する面白ドキュメンタリー「共犯者たち」など

韓国では報道機関に政府の圧力が働き、言論の自由や民主主義が存在しないことを批判した韓国映画のドキュメンタリーを見て心底びっくりした。

韓国に対して20数年関心を持ち続け、良い点も悪い点も大体のことは理解しているつもりだったが、全く自分が無知であることを思い知らされた。(弁解すれば、こんなことが存在するなんて想像できないではないか)。
とにかくヒドイ状況で、これから述べるように何とか報道側が逆転勝利して事態はよくなったと映画を見て安堵したのだ。
しかし、それ以降の、現在の日韓の外交の進展を見ると事はさほど単純ではないことにも思い至る。嗚呼、複雑なりこの時代、困難なり日韓外交。

映画「共犯者たち」監督:チェ・スンホ

「共犯者たち」 監督:チェ・スンホ 2017年 韓国

前置きが長くなったが、この映画は2017年の「共犯者たち」である。イ・ミョンバック大統領(2008~2013)、パク・クネ大統領(2013~2017)の時に、国営放送であるKBS(日本のNHKにあたる)や、公共放送のMBSに人事の圧力を加え、政権寄りの放送をさせた事実や、それに反対する活動を行い解雇などの処分を受けた職員の闘いを描いている。

映画を見ていると分かるが、政府のマスコミへの露骨な圧力とマスコミのトップの対応には唖然としてしまう。
例えば、政府のBSE(狂牛病)対応に疑問を呈する番組を作ると(08年)「交渉担当者の名誉を傷つけた」といって政策担当者が逮捕される。これに対してキャスターが「外国には品位のない国だと思われる」とコメントすると、更迭される! 他にもセウォル号沈没事件(14年)の大誤報を出し政府寄りの報道を続ける。
民主主義国家であるはずの国でこんなことが起こっていたとは!

監督はチェ・スンホというMBCの元社会派名物ディレクター。彼も12年に公共放送の正常化を求めてストをして解雇され、新しい報道組織を作り上げ映画も作っている。彼がアポなしでインタビューする様は、「ボーリングフォーコロンバイン」のマイケル・ムーアのようである。

結局。パク・クネ大統領はチェ・ジンシルゲート事件により弾劾されて政権を降り(16年末)民主勢力は勝利する。監督のチェ・スンホは何とMBCの社長に就任するのである(17年)。
このままだったら、私は拍手を惜しまなかっただろう。しかし、話はこれからだ。この20数年、言わば「親韓派」だった私でさえ昨今の韓国政権にはええっと思う気持ちを抱いている。そして、現在のマスコミ報道機関にも怒りと困惑が生まれる。

1月12日だったか、ムン・ジェイン大統領が年頭挨拶をしたが、大半は経済や北との関係についての話で(それはそれで大事だ)、日本との関係(徴用工の問題、レーダー照射の問題)についてどう考えるか全く述べない。NHKの質問に対し数分答えただけだった。
何を言いたいかというと、民主化され健全になったはずの報道機関はなぜ大事な問題を質問しないのか、追及しないのかということだ。
政権に対し「忖度」をして質問をするのを控えている!(あるいは、心底、大統領の主張や言い分が正しいと考えているのだろうか)。
何か、夜郎自大だなあと思う。自分たちが国内だけで意見を通せばいいだけで、もっと他国の関係を大きく見る視点はないのだろうか。映画を見ているだけに何だか失望してしまうのだ。

映画「華氏119」監督:マイケル・ムーア 出演:ドナルド・トランプ バーニー・サンダース

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さて、気を取り直して好きな映画をもう一本!
マイケル・ムーアの昨年度公開の「華氏119」はトランプ大統領を批判する傑作だった。
彼への批判だけでなく、監督の故郷フリントでの水道水質汚染問題、賃上げストを行う教員、カリフォルニアの高校での銃乱射事件で生き残った若者の銃規制への訴えなど、沢山のことが盛り込まれている。
純粋なドキュメントというより、11月6日行われた「中間選挙」の為のプロパガンダ映画の性格を帯びている(実際、効果はあったと言える)。
ムーアのアメリカへの現状への危機感は相当に大きい。ヒトラーの台頭した状況に似ていると、戦前のニュース映像を引用してガンガンと訴える。我々も慄然とするしかない。

(by 新村豊三)

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