これは凄い、初めて見たコロンビア映画「monos 猿と呼ばれし者たち」

前回、正統派の傑作として「モーリタニアン 黒塗りの文書」を紹介したが、今度は、これまた正真正銘、異形の大傑作について書きたい。面白い、スゲエ、こりゃ何だの、初めて見たコロンビア映画「monos 猿と呼ばれし者たち」だ。
渋谷の映画館を出た後、圧倒されてしまい、少しクラクラして歩いた位。傑作と言うのは、一体どこから不意に現れるか分からない。

「monos 猿と呼ばれし者たち」監督:アレハンドロ・ランデス 出演:モイセス・アリアス ジュリアンヌ・ニコルソン他

「monos 猿と呼ばれし者たち」監督:アレハンドロ・ランデス 出演:モイセス・アリアス ジュリアンヌ・ニコルソン他

実はよく分からないストーリーではある。アンデス山脈の高地だろう、10代の男女混交の8人ほどの少年兵が、厳しい上官(なんと小人)から軍事訓練を受けるところから始まる。どうもゲリラ兵らしい。彼らは「博士」と呼ばれる英語を話す中年女性を人質にして、それを監視する役割を担っている。
各人の名が「ビッグフット」「ランボー」「レディ」という何のつながりもない名で、西洋風の子もいれば、現地人の顔つきをした子もいる。顔も最初はよく見分けがつかない。不思議な感じだ。正直、最初の3分の1ほどは面白くない。前の席の中年男性は席を立って帰ってこなかった位だ。

ところが、上官から与えられた牛を殺したことから仲間の間に亀裂が生じ、加えて「博士」が監視されているアジトから抜け出す。大きなナイフを携え、川の中で浮かせるためかカラのペットボトルを体に巻きつける。虫に体を刺されながら、草むらを抜けたり濁流に入ったりして必死で脱出を図る。
舞台は前半の暗い高地でなく、陽の射すジャングルになっている。ここからが、これは何なんだの驚愕の連続と言うか、画面に惹きつけられる展開となるのだ。
やがて、少年兵たちは、上官に反抗することになる。。。一人の女の子は、仲間を裏切り、逃走する。小さな子供たちがいる、平和な家庭にお世話になる。すると追手がやってくる。。。先が全く読めない。リアルでグイグイくる。
観ながら、かつて見たベトナム戦争映画「地獄の黙示録」(1974)、アメリカ人が不気味な現地人に襲われる「脱出」(1973)などを思い出した。

この映画は、話が面白いだけでなく、演出がリアルで、かつ映像がこの上なく鮮烈かつシャープなのだ。臨場感も半端でない。役者たちはジャングルの密林に入り、おそらく一切CGなど無しで役者が全て己の肉体で演じている。
恥ずかしながらコロンビアの社会情勢に疎い。「内戦」が続く国らしいから、この子供たちは何かの象徴なのかも知れないが、分析する力がない。この映画の面白さを上手く伝えられなくて申し訳ない。ご覧になれば分かる、と言わせてほしい。ともかくも、豊かな才能を持った監督による見たことのない映画であることは保証したい。

ある英国の映画雑誌の投票によれば、昨年、韓国映画の傑作「パラサイト 半地下の家族」より上位に評価されたとのこと。異論はない。尚、「monos」とはスペイン語で猿の意味。

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さて、好きな映画をもう一本!
密林が舞台で、人間がうごめく映画としては1972年のドイツ映画「アギーレ 神の怒り」が傑作だ。1560年、インカ帝国を征服したスペインの探検隊が、アンデス山脈からアマゾン川を下って伝説のエルドラド(黄金郷)を探そうとする。
冒頭、霧の中、峻険な山から、探検の一行が降りて来るショットからして惹きつけられる。それは、兵、先住民、奴隷、宣教師、そして御輿、食物の鶏や豚、加えて大砲(!)などで構成される大集団だ。しかし、行き詰まり、まず40名ほどの分遣隊が食糧探しとエルドラドの情報を求めて、筏(いかだ)に乗って川を下ることになる。川は台風のような奔流だ。
先遣隊も、やがて、食糧は無くなり、熱病が起き、仲間割れが起きる。また先住民に殺される者も出て来る。主導権を握った副隊長のアギーレ(凄い面構えをしたクラウス・キンスキー)は黄金と広大な土地の支配者になる妄想に取りつかれてしまい狂気の世界に入っている。

リアルでドキュメント的な演出と圧倒的な映像が凄い。川を行く一行の筏にどこからともなく毒矢が飛んでくる。観ていて怖い。時に何も物音がしない。静かな緊張感があるのがいい。そのくせ、従者が数を数えていて突然首を刎ねられ、その飛んだ首が、地面に落ちてもまだ数を数えているというブラックユーモアもある。
製作当時続いていたベトナム戦争の寓意か、あるいはヴェルナー・ヘルツォーク監督がドイツ人だからヒトラーの狂気を意味するのかは、よく分からない。しかし、そういう解釈や理屈を超えて面白い。

(by 新村豊三)

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