現在の福島を描く2本のドキュメンタリー「盆唄」と「福島を語る」

福島のことは気になりつつも日常の忙しさにかまけてつい忘れてしまいがちだ。実は今年も何本か現在の福島をテーマにしたドキュメントが公開されていて、そのうちの2本をやっと見ることが出来た。

「盆唄」監督:中江裕司

「盆唄」監督:中江裕司

まず、「盆唄」。これは数回前に紹介した沖縄が舞台の傑作ミュージカル「ナビィの恋」を撮った中江裕司監督の作品だ。
目の付け所がユニーク。双葉町から離れて避難生活を送っている、避難前は伝統の「盆唄」を唄い、踊り、太鼓をたたいていた人たちが、何とハワイに100年以上も前に福島から伝わった同じ盆唄が唄われていることを知り、ハワイを訪ねてゆき交流する。その後、いろいろな地区の「盆唄」の演奏グループを集結させて避難後初めて合同盆唄大会を開く過程を描いている。

描かれるテーマ自体からは逸れるが、この推進メンバーの太鼓のリーダーの男性横山さんが実に魅力的なのだ。自営の会社の社長さんだが、ギターが趣味で立派なギターを幾つも立派なお宅に所有しておられる。震災に負けず、少年の心を持って楽しそうに前向きに進まれるお人柄だ。

正直に書くと、残念ながら、この映画は期待に及ばなかった。前半、横山さんの魅力もあって相当面白いが、話が広がり過ぎた感があり全体として散漫になっている感想を抱いた。
渋谷の映画館に行った時、偶然中江監督のトークがあり、「今日は正直に本音を言います。福島を被害者だけのイメージで捉える映画にしたくなかった。しかし、(全体として)生真面目過ぎました」と少し苦渋に満ちた表情で語られた。
確かに、横山さんのような人が活躍する姿を見ていて嬉しいが、「ナヴィの恋」のように、終盤にかけてもっとググっと明るく盛り上がって「祝祭感」が生まれる構成に出来なかったかと惜しまれる。

さて、もう一本は「福島を語る」だ。これは14人の登場人物の話を聴くだけという真にシンプルな作りだがとても感銘を受けた。成程自分はこんな「フクシマ映画」を見たかったのだと思った。
監督は4年に渡り100人余りの方にインタヴューをしていて、そのうち14名が登場する。固定カメラはインタヴューされる方のお顔を正面から捉えるだけである(監督は手前にいて質問するだけ)。

ドキュメンタリー映画「福島は語る」制作・監督:土井敏邦

「福島は語る」制作・監督:土井敏邦

途中休憩が入る2時間50分の長尺だが、飽きるどころか一人一人の話に引き込まれてしまった。まさに、「傾聴」する映画なのだが、私はすべての方に、そうでしょうね、そうでしょうねと何度も頷きながら聞き続けた。時にこちらも厳粛な気持ちになり背筋が伸びてくる。それぞれの方が深い気持を吐露される。いろんな方のお立場や心情が分かったと思う。
「作り」そのものはシンプルだが、1章から最終章までの構成の流れがよく出来ている。順に「避難」「仮設住宅」「悲憤」「農業」「学校」「抵抗」「喪失」「故郷」である。

それぞれ印象深い方ばかりだが、特に、わずか4畳半の仮設住宅に暮らしながら魂に響く詩を書かれた65歳の男性、東京で反原発デモを繰り返しながら急死された農家の方、透析を受けながら死を考えるという女性、津波に逢われた女性の小学校の先生、沖縄も福島も同じ、日本では経済性と軍事が優先されると発言される元新聞記者の方、お子さんが成田で避難生活を送るも慣れぬ場所で心身病んで行き、ついに死に至った社長さんの話などが印象強い。

その小学校の先生はこう言う。「避難先でいじめられているって聞いて、その生徒の小学校の校長に抗議の電話をしたわ。毎年3月11日の黙とうなんかしたくない。いつだって忘れたことはないのに、無理に思い出せと言われるようだ。この日、校長から年休もらって、避難先の学校で言いたいこと言えないで生活している子供たちと一緒にドライヴに行ったわ」
先生の生き方、生徒への接し方が素晴らしい。この小野田陽子さんの明るさとヒューマニズムを一生忘れまいと思った。

(by 新村豊三)

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