閑散とした劇場で見た秀作2「ジュディ 虹の彼方に」「レ・ミゼラブル」「盗まれたカラヴァッジョ」

止まらぬ新型コロナ感染拡大を受けて映画館に行くのを控えている。映画館は十分な換気が出来るように作られているし、上映中、観客は話をしない(!)、前を向いて座っているから、それほど心配はいらないと、ラジオで言っていたが、それでも、見に行く回数は減らした。また、行くとしても出来るだけ観客が少なさそうな映画館を選ぶ。

そんな時に限って(?)、秀作に出会ったりする。今回は、見に行かれなくて結構だが、名前だけは覚えておいてもらいたい映画を紹介したい。

監督:ルパート・グールド 出演:レニー・ゼルウィガー ジェシー・バックリー他

監督:ルパート・グールド 出演:レニー・ゼルウィガー ジェシー・バックリー他

まず「ジュディ 虹の彼方に」だ。
アメリカの俳優・歌手であったジュディ・ガーランドが47歳で亡くなる直前の数週間を描く。周知のように、彼女は17歳の時「オズの魔法使」でヒロインのドロシーを演じ、主題歌「虹の彼方に」を唄って一躍スターになったが、大人になってからは、精神的に不安定な状態が続き、結婚生活も破綻し、不遇の人生を送っている。
この映画は、金に困ったジュディが子供を元夫のもとに置き、ロンドンに渡りクラブのショーで唄う仕事を始めるところから始まる。不眠症であり安定剤を飲みながら、アルコールに依存し痛々しい。映画会社に酷使され自由な時間が持てなかった少女時代の回想も入る。

そんな中、とてもいいエピソードが描かれる。ショーの後、深夜、ファンである二人の中年のゲイと意気投合し、食堂が閉まっているため、二人のアパートに行き、ジュディが手料理を作ったりして心を通わす一夜を過ごすのだ(これがラストの感動的なシーンに上手く繋がるのがいい)。
私は知らなかったが、彼女はゲイを受け入れる考えを表明していたため、今も、LGBTの人に人気が高いそうだ。
ジュディを、レネー・ゼルウィガーが演じてアカデミー賞の主演女優賞を受賞した。外見だけでなく、ジュディの「魂」まで表現した、いい演技だと思う。

監督:ラジ・リ 出演:ダミアン・ボナール アレクシス・マネンティ他

監督:ラジ・リ 出演:ダミアン・ボナール アレクシス・マネンティ他

2本目はフランス映画「レ・ミゼラブル」。チラシから、昨年の凱旋門に集まった「黄色いベスト運動」を描いた映画かと想像していたが、さにあらず、もっと深刻な、移民と現地の人々の衝突を描いた衝撃的な映画だった。
パリ郊外には移民のための低所得者用の巨大団地があり、ここで様々な問題が生まれていることを「映画」はずっと描き続けてきた。移民2・3世の若者には職がなく軽犯罪が多発するのである。

この映画は、地方からこの団地に転勤してきた警官が同僚とパトカーに乗って団地を巡回する時に遭遇する様々な出来事をリアルに描いていく。
団地には、黒人、アラブ系住民、それにロマの人々等が暮らし、一触即発の状態にある。そんな中で、黒人の少年が、ロマのサーカスのライオンの子を盗んだこと、また、警官がその対応をする様子を、別の子がドローンで撮影していたことから生まれる混乱と対立の物語が展開する。緊迫感溢れると言うより、もう悲しく辛すぎる程の展開だ。

この物語は決して作り話でなく、自身この団地で生まれ育った黒人監督ラジ・リの周辺で実際に起こったことだそうだ。映画はカンヌ映画祭で「パラサイト」と最高のパルムドール賞を争ったが、それもムベなるかなと思うほどの力作。しかし、最後の展開はツライ、という気持ちがあることも申し添えておきたい。

監督:ロベルト・アンドー 出演:ミカエラ・ラマゾッティ アレッサンドロ・ガスマン他

監督:ロベルト・アンドー 出演:ミカエラ・ラマゾッティ アレッサンドロ・ガスマン他

最後の一本はイタリア映画「盗まれたカラヴァッジョ」。イタリアで実際に起きた名画盗難事件(未解決)を基にしている。しかし、「絵画」に関する重厚なミステリーでなく、「映画作り」に関する映画なのが愉しい。

盗まれた絵画に関する映画の製作をしていると、マフィアが、映画の結末を教えろと脚本家を脅してくる。ところが、実は、彼の女性秘書がゴーストライターをやっていて、答えられない。多彩な人物が現れ、首相まで登場する。少し詰め過ぎの感はあるが、現実と「映画」が交錯してくるのがお見事。秘書、その母親、そして脚本家を演じる役者が驚く演技をするのも見ていて楽しい。
コロナで気分が沈みがちな昨今、この映画の愉しさに心がほぐされたという、映画の見巧者である知人がいるが、私も同感である。

(by 新村豊三)

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