巣ごもり生活で見た映画2 感染映画「コンテイジョン」と1975年の「うず潮」

映画仲間に教えてもらって見た、2011年アメリカ公開のウイルス感染映画「コンテイジョン」が恐ろしくも面白い。コンテイジョンとはズバリ「感染」という意味だ。

映画「コンテイジョン」監督:スティーブン・ソダーバーグ

アメリカで新型ウイルスが発生し、治療法もないまま感染が広がり、社会が混乱していく様が描かれ、それは今のコロナ禍とそっくりの状況だ。
冷静でリアルな演出に加えて、マット・デイモン、マリオン・コティヤール、ジュード・ロウなど人気も実力もある俳優が沢山出演しているのもよい。

脚本家が疫学者の助言を得ながら書いたそうで、ウイルスが広がる過程、アメリカの疫病対策センター(CDC)や科学者たちの調査・研究の描写は非常に正確とされる。
劇中、「唯一の対策はソーシャル・ディスタンスを取るしかない」とCDCの責任者が言う言葉にはビックリ。

冒頭、咳をする女性の声が聞こえる。香港出張からミネソタ州の家に帰ってきたその中年女性がまず悶死する。続けて彼女が最初に濃厚接触した、別の男性も違う州で変死する。そこから恐怖が生まれていく。映画は、ドキュメントの様に、発生何日目という文字が出て進行していくのだが、それが緊迫感と臨場感を出す。

今の現実と違うのは(早くそうなってほしいが)、アメリカがワクチン開発に成功することだ。しかし、開発されたものの量が足らず、どんな方法で国民に分配するかが問題になる。
その分配の仕方が驚く。一般公開されてコンピューターで抽選を行うのだが、コンピューターが365通りの「誕生日」をランダムに出し、出た「誕生日」と同じ者からワクチンが貰えるのだ。当たらぬ人はずっと待たねばならない。このやり方はリアルでちょっと納得してしまった程だ。

映画の最後に、感染第一号の患者の感染の原因が明らかにされるが、それが映画として中々に鮮やかだ。次に書くことはネタバレに近いが、ウイルスに関する多少の知識がある方ならば別段驚くことでもないかもしれない。
こんなラストだ。ブルドーザーによって未開発の森林が開発されていく。森林には、未知の細菌やウイルスがいるのだ。一匹の蝙蝠が、ウイルスの付いたバナナを口にくわえて、養豚場に運ぶ。落としたバナナを豚が食べて、やがてそれが、中華料理店の厨房へと運ばれていき……つまり、グローバル時代の乱開発が新型ウイルス発生を引き起こすのでは、という問いを投げかけているのだと受け取った。

さて、外で映画が見られないなら、この機に、未見だった映画史上の名作を勉強しようと、毎日せっせと見ている。大変に面白いものもあれば、どこがいいのか理解に苦しむ(少なくとも今の自分に響かない)映画もある。「風と共に去りぬ」の、あのビビアン・リーが出ている「欲望という名の電車」(51年 米)などは、暗くて重くて、登場人物も性格悪く、見続けるのがイヤになってしまったほど。

それで、軽くて明るそうな娯楽映画がないかと、何の予備知識もなく、アマゾンプライム会員無料というので見たのが1975年のフランス映画「うず潮」だ。
映画史に残る作品ではないと思うが、これが、大変に面白く、大満足、大正解! これだから(?)映画は止められない!

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南米ベネズエラの結婚式場から若い花嫁が結婚相手をいやになって逃げ出してしまう。逃げ込んだホテルの隣の部屋にいた中年男に救ってもらい、ドタバタがあった後、女は、その男が一人暮らす孤島に行って、家に住み着いてしまう。
その女が、若かりしカトリーヌ・ドヌーブ。もう溌剌として元気に能天気の女を演じている(なんせ乗った船を壊して海に沈めてしまう程)。男はフェイスもいい渋いイブ・モンタンだ。

先の読めないテンポの速い面白さもいいが、イブ・モンタンが、青い空と海の下、家畜を飼い、野菜を育て、木を伐り、風力発電を行い、ワインを作り、伸び伸びと自給自足の生活をしているところが何とも心地よいのだ。こんな風に家に籠りっきりの生活でなく、自分の体を思いっきり使って、様々な作業をやりたいと思う。

モンタンの隠遁生活の理由も分かって行き、結局、納得のラブストーリーへと着地する、お見事な娯楽作品。本当に気分が明るくなる映画だった。

(by 新村豊三)

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