ウクライナに関係した映画「ひまわり」「フランス組曲」、そしてロシア映画「親愛なる同志たちよ」

年に数回、知り合いのピアニストのリサイタルを聴きに行くことにしている。その女性のIさんは、東京芸大の学生の時、澤井信一郎監督、1993年の本格的音楽映画「わが愛の譜 滝廉太郎物語」で主役の風間トオルに代わってピアノを弾いている。勿論、手だけであり、しなやかな手指のショットが写るのだ。風間が血を吐いて倒れるシーンでは、代役として、監督から体をグッと前に押された記憶があるそうだ。

映画「ひまわり」監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 出演:ソフィア・ローレン マルチェロ・マストロヤンニ他

映画「ひまわり」監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 出演:ソフィア・ローレン マルチェロ・マストロヤンニ他

それはともかく、彼女の演奏は全てクラッシックの曲なのだが、今年、アンコールに応えて弾いた曲が映画音楽「ひまわり」であった。題名を告げずに弾き始めたのだが、一瞬にして「ひまわり」だと分かり、ウクライナの大地に咲き乱れるひまわりの映像と共に、何度も何度も報道される、破壊されるウクライナの街の映像が浮かんでしまい、辛いものがあった。
以前「ひまわり」の映画を観た時、ひまわりが咲いている舞台がウクライナだとは全く意識していなかった。今年、あのロシアの侵攻が始まってから初めて知ったのだ。
この映画の筋を言う必要もないかも知れないが、イタリアの北の都市ミラノに住む結婚したばかりの夫婦の夫(マルチェロ・マストロヤンニ)が戦争に出征し、戦後も帰国しない。夫の生存を信じる妻(ソフィア・ローレン)が、ソ連まで夫を探しに行くと、夫は、負傷して倒れた時に助けてくれたウクライナの土地の女性と新しい暮らしを始めていたという悲劇であった。あの切なく甘いヘンリー・マンシーニ作曲の主題歌が哀しい。

フランス組曲

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正直、ウクライナの映画はほとんど見ていない。間接的にウクライナに関係した映画を一本だけ挙げたい。2015年イギリス・フランス他の合作「フランス組曲」だ。ウクライナが舞台ではない。ウクライナ出身の女性イレーネ・ネミロフスキーの本が原作だ。彼女は、20世紀初頭、当時ロシア領のキエフ(現キーウ)のユダヤ系大富豪の娘として生まれ、革命を経験し、パリ大学を出て作家活動を始めたが、フランス人憲兵に捕らえられて、アウシュビッツ強制収容所に送られそこで39歳で亡くなっている。彼女は、ナチス占領以降もノートに小説を書きつけ、死後、60年経って本となった。

この映画は、1940年、占領してフランスの田舎町にやって来たドイツ人将校が、地元のフランス人女性と恋に落ちる哀しく切ない映画だった。ピアノが二人を引き寄せていく。主役のヒロインはアメリカ人の演技派ミシェル・ウイリアムズ。彼女の義母になるのが、イギリスの実力派クリスティン・スコット・トーマスだ。
革命による没落とユダヤ人の悲劇を共に経験したウクライナ人女性の原作として記憶しておきたい。

さて、好きな映画をもう一本! ロシア映画「親愛なる同志たちよ」だ。正直、この映画を観たくない気持ちもあった。それは、ひとつには、「ロシア」に関係するものは全て拒否したい気持ち、もうひとつは予告を見て、また、人が殺されるようだから見るのをためらう気持ちがあったから。

映画「親愛なる同志たちよ」監督:アンドレイ・コンチャロフスキー 出演:ユリア・ビソツカヤ アンドレイ・グセフ他

映画「親愛なる同志たちよ」監督:アンドレイ・コンチャロフスキー 出演:ユリア・ビソツカヤ アンドレイ・グセフ他

しかし、この映画は、ざっくり言えば、反ロシア映画だった。史実に基づくが、1962年に、工場で労働者のサボタージュが起き、それを、国家(軍とKGB)が制圧、押しつぶした話だ。主人公である女性は、戦前の革命時に功績があった叩き上げの地区委員会の偉いメンバーの一人でそのストライキを抑え込もうとする。その娘は逆に、工場労働者である皮肉な設定が、ストーリー展開上、面白い。

陰鬱な話だが、権力側に属する者にも、若干のヒューマンさが残っていること、また、主人公たちが若い頃、優れた国家を作ろうという理想があったが、青春を捧げても理想通りに行かなかった現実への哀しみが描かれ、それは西側の私にも伝わってきたように思う。
そういう内容が、モノクロの、当時を見ているかのような(巧く時代色が出ている)、シャープで迫真に満ちた、ドキュメント的な映像と演出で描かれる。これは、スタンダード画面も関係するのだろうか。また、緊迫の映像の中にも、一輪の花を映すなど、静と動の対比もある。

ヒロインの女性は熱演(監督夫人だ)。彼女の老いたる父親が、また、いい味を出している。若い頃は、土地のコサック兵としてロシアと戦った過去がある。ロシアはロシアでも、いろいろな事情があった。
戦争を行う国家と、映画などの芸術は、やはり違うと認識した方がいいのだろう。

(by 新村豊三)

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