巣ごもり生活で見た映画3「ゴッドファーザー PART II」と「JFK」

「ステイホーム」を逆手に取って、じっくりと長編の作品を見ている。その中で面白かったのは40年以上前に見た「ゴッドファーザー PART II」(74年 米)と、初めて見た「JFK」(91年米)だ。

「ゴッドファーザー」シリーズは米での評価が極めて高い。AFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)という団体が、2007年に選出した米映画ベスト100のリストによれば、「ゴッドファーザー」は堂々の史上2位、「PARTⅡ」も32位である。

ゴッドファーザーPART II 監督:フランシス・フォード・コッポラ 出演:アル・パチーノ ロバート・デ・ニーロ他

監督:フランシス・フォード・コッポラ 出演:アル・パチーノ ロバート・デ・ニーロ他

「ゴッドファーザー」シリーズは、アメリカにおけるイタリア系マフィアの紛争と権力の掌握を、家族の愛と葛藤を絡めて描く、壮大な叙事詩である。緻密な脚本と堂々たる演出に感心する。
特に、若かりし先代のドン(ロバート・デ・ニーロ)と現在のドンであるマイケル(アル・パシーノ)の話が、過去と現在とで交互に進む「PART II」は大傑作。
当時まだ無名だったデ・ニーロの、痩せて青白い炎が燃えているような、繊細かつ凶暴さを秘めた演技が光る。彼が、ニューヨークのキリスト教のお祭りの中で、地元のギャングを銃で射殺するシーンはこの映画の白眉の一つ。銃を発射した後、消音の為に拳銃の先に巻いていた布に火が点き、振って火を消すリアルなディテールにも感心する。

さて、期待以上に面白く、目が離せず見続け、ラストに至るや、自分の今の感性まで撃った映画がオリバー・ストーン監督の「JFK」だ。
「JFK」とは、わずか46歳の若さで凶弾に倒れた米35代大統領であるジョン・フィッツジェラルド・ケネディの頭文字だ。

映画「JFK」オリバーストーン監督

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ケネディは1963年11月22日にテキサス州ダラスでオープンカーに乗ってパレード中、リー・オズワルドに狙撃され、そのオズワルドも2日後、別の男に射殺された。
事件を調べたウォーレン(最高裁長官)による報告書はオズワルドの単独犯行と結論している。恥ずかしながら、私はそれ以上のことはよく知らなかった(因みに、事件が起きた時私は田舎の小学3年生だったが、新聞の号外が出て読んだことを記憶している)。

実話に基づく映画は、オズワルドの単独犯行ではないと考えたニューオリンズ地方検事のジム・ギャリソンが、事件の6年後に、暗殺に直接関わった男に対し訴えを起こすも、有罪に出来ぬプロセスを描いた力作だ。
206分の長編だが少しもダレない。話も面白いが、役者も、演出もいいのだ。難点と言えば、主役の検事を演じるケビン・コスナーがカッコよすぎる(?)ことか。
それはともかく、脇を支える人物もかなり贅沢な配役だ。曲者役者が多いのがいい。オズワルド役のゲーリー・オールドマンも存在感抜群だが、最も印象に残るのは、主人公がワシントンに行ったとき、真相を伝えに来る、退役軍人のドナルド・サザーランド。
彼が滔々と話す真相とは、狙撃は単独犯行ではなく、ケネディが、当時国家の大問題だったベトナム戦争から撤退する方針をとったため、軍部や、副大統領のジョンソン、FBIが、権益を守るため、体制を守るために、ケネディを暗殺する陰謀を企て実行したということだ。これには心底驚いた。

映画として圧巻なのは、裁判で、ケビンが、現場にいた個人が撮った8ミリフイルムを上映して、オズワルドの弾丸がカクッ、カクッと曲がって(!)ケネディに当たるわけがない、短い時間に3発も撃てるわけではないことを証明するシーンだ。
回想シーンにはモノクロフイルムを使い、見事な編集により、緊迫感を持ちつつ、検事の主張(即ち、製作者側の主張)を観客に打ち込んでいく様は立派というしかない。
私はこの映画だけで、検事の主張が全て分かったとは思わないが、それでも、単独で狙撃が行われたはずがない、という強い確信は持つに至った。

さて、ラストのケビンの言葉には胸突かれた。
証拠が開示されないことに対し、彼は言う。真実を知るのが一番貴重だ。情報を殺す政府を尊敬出来ねばこの国で死にたくない、と。
正に、これは、真実を覆い隠し、書類を破棄する政府を持つ私に向けられた言葉と受け取った。
巣ごもりの孤独の中で、我々の意識は、以前より高まったはずである。政治を注視せねばと思う。

(by 新村豊三)

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