三浦友和の数々の映画――「ホワイト・ラブ」「台風クラブ」「転々」「盗まれた情事」

三浦友和は1974年(昭49)、歌手でアイドルの山口百恵の映画初出演作「伊豆の踊子」の相手役として映画デビューした。俳優生活が50年を超えている。いい人・穏やかな人のイメージが強いが、彼は芸域が広く、シリアスな作品もコメディもこなす。ただ、主演した映画にそれほどの作品がない。助演として渋い味を出すタイプだろう。
実際、キネマ旬報で助演男優賞を3回受賞している(主演賞は一度もない)。でも、それでいい。年齢も74歳。もう、そこに徹すればいいと思う。

50年前の学生の頃は金がなくて、「百友映画」と呼ばれた、のちの奥さん山口百恵と共演した映画を封切りで見る余裕もなかったが、70歳の今、何作か集中して見ると、さすがドル箱コンビだけあって、よく出来ている作品が多い。

監督:小谷承靖 出演:。山口百恵 三浦友和ほか

監督:小谷承靖 出演:。山口百恵 三浦友和ほか

1979年(昭54)の「ホワイト・ラブ」が正にその一本だ。スタイリストの忍(山口百恵)は、語学学校でスペイン語を習い始めるが、講師の健(三浦友和)と知り合う。忍は姉と共に、美容師の母親に女手ひとつで育てられたが、亡くなったと聞いていた父がスペインで生きていると知ったのだ。健は、元はスペイン駐在の会社員であったが、事情があり会社を辞めて帰国している。
2人は段々親しくなって行く。忍は、父親の友人と共にスペインを訪れるが、二人を追って、健もスペインへ向かう。地元でフラメンコギターの職人になっていた父親(小林桂樹)は、今は一人、重篤な病に掛かっている……。

お話もよく出来ている。娯楽性たっぷりで、スペインロケを上手に行い外国への憧れも満たしてくれる(地元の牛追い祭りも映画の中に生かされている)。これぞ職人芸の一本である。垢抜けしない70年代の東京(風景や風俗)が映っているのも今となっては懐かしい。

監督:相米慎二 出演:工藤夕貴 大西結花 三浦友和ほか

監督:相米慎二 出演:工藤夕貴 大西結花 三浦友和ほか

三浦友和が、自分を変えた大事な一本として挙げているのが1985年(昭和60)公開の「台風クラブ」である。長回しで知られる早世した相米慎二が演出。長野県の田舎の中学校に、ある夜、台風が来る。中3の男女数人がその一夜をどう過ごすかを描いた作品。
ロングショットでカメラを据え、人物の区別がよくつかない。男の子が執拗に女の子を追いかけたり、男女の生徒が体育館で服を脱いで踊り出したりする。台風直撃の下、思春期の悶々とした生のエネルギーが湧き出て、不思議に惹きつけられる作品だ。

先日、湯布院映画祭の大きなスクリーンで40年ぶりに見直したが、当時よりはるかに面白く感じられた。
三浦はこの映画で、ちゃらんぽらんでやる気のない数学の先生役を演じた。それまで、優等生で好人物を演じることが多かったが、一皮剥けたのである。

芸域が広いと書いたが、2007年の「転々」は笑える良質のコメディ映画である。大学8年生の文哉(オダギリジョー)が100万円の報酬で、借金取立人の福原(三浦友和)と一緒に都内を散歩してゆく姿を描く。福原は「桜田門の警視庁に行って自首する」と言うのだ。小ネタが抜群に面白く、三浦友和が正体不明の長髪のむさくるしい中年オヤジを怪演し、主役を食っているのが面白い。これは隠れた逸品。

好きな映画をもう一本! 映画祭で初めてスクリーン上映された三浦主演の土曜ワイド劇場「盗まれた情事」が滅法面白かった。荒井晴彦・高木功脚本で、神代辰巳が監督。これが彼の遺作となる。1993年に製作されたが、全共闘世代を描きすぎだというのでお蔵入りとなり、神代が亡くなった1995年に放映。

神代らしい、長回しスタイルの演出はないものの、話が強烈。昔、全共闘を闘った、大病院の副院長である矢沢(三浦)は、病院長の娘である妻との仲は冷え切っている。矢沢はある日、エロ雑誌の投稿欄で、性的不能の自分に代わって妻を抱いてくれたら報酬を払うというものを見つけて応募し、その女と何回かホテルで寝る。すると、その情事の声を隠しマイクで楽しんでいた男が射殺されてしまう。よく練られた計画殺人だったのだ。

話が2転3転するサスペンスであるだけでなく、全共闘世代の心情を浮かび上がらせる一作になっているのが面白い。例えば、全共闘嫌いのテレビ局の男(田口トモロヲ)に、土下座しないと犯罪への嫌疑をばらすぞと脅されると、矢沢は、土下座をしつつも「全共闘で好き勝手やってすみません。でも、気持ち良かったです」と言い返すのだ。
見巧者の多い映画祭観客にも支持された、隠れた傑作「映画」である。

(by 新村豊三)

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