<赤ワシ探偵シリーズ3>ノルアモイ第二十四話「立体都市の天辺で(2)」by 芳納珪
足の下を雲が流れていく。最初は気がつかなかったが、この屋上は極めて屈折率の低い透明なドームに覆われているようで、強い風にさらされることもなく、快適な気温と湿度が保たれている。 素晴らしい食事のあ...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
芳納珪がおくるハードボイルドSF童話「赤ワシ探偵シリーズ」第3弾。
足の下を雲が流れていく。最初は気がつかなかったが、この屋上は極めて屈折率の低い透明なドームに覆われているようで、強い風にさらされることもなく、快適な気温と湿度が保たれている。 素晴らしい食事のあ...
純白の紙に箔押しが施された瀟洒な招待状を見せると、ガードロボットは優雅に一礼してドアを開けた。 バーコードも印刷されていないし、紙に透かしも入っていないが、本物のレディMからの招待状であることを、ガ...
立体都市最古の家系のひとつ、フェアードマン家の現在の当主と200年前の当主が、対峙している。 町並みを形成する構造ユニットの屋上に立ったレディMは、背中に背負った筒状の装置を前に回すと、...
私は目をしばたいた。 確かに狙ったはずなのに、いま引き金を引いた万能銃〈ムラマサ〉の先が、フェアードマン卿から1メートルも横にずれている。 私は再び、フェアードマン卿の眉間に照準を合わせた。 ...
F・フェアードマン。 200年前の時代から抜け出したような紳士を、私はじっと見つめた。 レディMから遡って七代前のフェアードマン家当主。時間兵器「ノルアモイ」を作った張本人。 「余(よ)...
私は、占い師のロスコが易を立てるのを見ていた。 数十本の筮竹(ぜいちく)の束を両手でひたいの前に捧げ持ち、祈りを込めて束を分ける。一方は筒に戻し、残った方の本数を数える。その結果に従い、テーブル...
その領域には、元の世界と同じように十六番街があった。 アーケードの下は、どことなく不安そうな顔や、何かを期待する顔でいっぱいだ。 占いねずみたちが店を構える柱の周りには、客が占い師と会話す...
それは絶望を感じる風景だった。 合わせ鏡の中の世界のように、視界の続く限り、都市の構造体が無限に広がっているのだ。 私はできるだけ落ち着いて、昨夜のロ号歩廊での出来事を思い出そうとした...
竜巻の中に浮かんでいるような心地だった。周りの景色は見えなくなり、体の周りで円筒形の柔らかな壁が高速で回転している。が、不思議なことに風はなく、音もしない。 どれくらい時間が経っただろう...
エムニは私を抱えたまま、片腕の力だけで体を引き上げ、太い配管の上に立った。それから素早く私にトレンチコートを着せ、中折れ帽をかぶせてくれた。二つとも、探偵活動になくてはならないものだ。 ...