<赤ワシ探偵シリーズ3>ノルアモイ 第四話「ロ号歩廊」by 芳納珪
腕を組み、目をつぶって考え込んでいたグレコは、とつぜん「あーっ」と叫ぶと、帽子をつかみとって、両手でぐしゃぐしゃと頭をかきむしった。 「くそう、だめだ。うまく説明できる気がしねえ。俺が説...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
腕を組み、目をつぶって考え込んでいたグレコは、とつぜん「あーっ」と叫ぶと、帽子をつかみとって、両手でぐしゃぐしゃと頭をかきむしった。 「くそう、だめだ。うまく説明できる気がしねえ。俺が説...
「本当か!」 話を聞いてやると言った途端、占いねずみのグレコは目を輝かせた。それから、やけにしんみりした、遠くを見る目つきになった。 「俺、俺はよう……ロスコに拾われなけりゃ、死ぬ...
ちょうどそのとき、おかみさんが私の火星坦々麺を運んできた。 空腹が最高潮に達していた私は、グレコと名乗った占いねずみのことはそっちのけで、反射的に箸をとって坦々麺を食べはじめた。 縮れ麺に...
「やってるかね」 私は「月世界中華そば」の暖簾をよけ、引戸を開けて声をかけた。黄味餡みたいなおかみさんが、巨体をゆすりながら奥から出てきた。 「あら赤ワシのだんな、いらっしゃい。今...
月明かりの晩。 立体都市トキ市を縦横に走る無数の歩廊のうちのひとつ。その端の溝に、小さな黒い影がうごめいていた。 ちょろちょろっと進んでは立ち止まり、ゆらゆらと左右に揺れる。しばらくするとまた...