<赤ワシ探偵シリーズ番外編>山猫夜想曲◆第十一話「海底の街」
「この世の終わりみたいな顔をしているな」 殺される、というジョーの訴えを聞いても、磁天は真剣に受け止めていないようだった。むしろ、面白がっている様子だ。それを見て、ジョーの頭にカッと血がのぼった...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
「この世の終わりみたいな顔をしているな」 殺される、というジョーの訴えを聞いても、磁天は真剣に受け止めていないようだった。むしろ、面白がっている様子だ。それを見て、ジョーの頭にカッと血がのぼった...
「ん? オレを知っているのか?」 山猫の精悍な顔に、意外そうな表情が浮かんだ。それを見て、ジョーは思い直した。 「そんなはずはねえか。いや、実はここへ来る前に聞いた話を思い出してい...
生暖かい微風が肌にまとわりつく。 見渡す限り、赤紫の地面のうねりが広がっている。遠くの丘の稜線の上は、暗い青緑色の空だ。 地面に押し当てている手の肉球に何かが触れた感じがした。ジョーは手をどか...
ジョーに選択肢はなかった。 あらためて両手を見ると、心なしかクラゲ化が進行しているように見える。ジョーは決心した。顔を上げ、ボスとシマジをまっすぐに見た。 「行くしかねえようだな」 ...
宙に浮かんだ水の塊は、ひと抱えほどの大きさになると成長をとめた。 中心から湧き出していた水流は、しばらくは激しい勢いでぐるぐる回っていたが、やがて静かになり、水の塊は分厚いレンズのような形に...
部屋を出たジョーは、茶トラに先導されて暗い廊下を進み、階段を上がった。 並んだ扉の一つを茶トラがノックすると、中からくぐもった返事が聞こえた。 茶トラが扉を開けてうやうやしく礼をした。 「ボ...
ジョーは目を開けると、床に散らばる本の間に丸めていた体をにゅーっと伸ばした。時刻は午後9時。いい頃合いだ。 いつものように寝ぼけまなこのまま、タバコに火をつける。深く吸うと、少し頭がはっきりした。 ...
部屋の真ん中にすっと立っているのは、じつに奇妙な代物だった。紫色に光る紐が、空中に一筆書きで、落書きのようなヒトガタを形作っているのだ。 ジョーが「誰だ、お前は?」と問いかけると、ゆらゆらとたよりな...
ジョーは夜ごと、他の猫たちの縄張りを荒らしては、因縁をつけてくる相手をコテンパンにぶちのめした。その所業は路上に知れ渡るようになり、ついにある夜、いくつかの猫集団がジョーを懲らしめるために集結...
カテリーナは、水玉模様のティーポットカバーを楽しそうに眺めた。ジョーはバーテンダーだが、料理もできるし、こうして本格的にお茶を入れることもできる。 「前にもそんなことを言ってたわね。『リカ・アム...