〈赤ワシ探偵シリーズ2〉ニフェ・アテス第二十七話「飛翔」
果樹林で撃ち合いながらサムと間合いを詰めようとしたが、なかなかうまくいかなかった。万能銃を低出力にして生け捕りにしたいのだが、有効距離が短いのが難点である。一方サムの銃は旧式の拳銃なので、あまり近づく...
果樹林で撃ち合いながらサムと間合いを詰めようとしたが、なかなかうまくいかなかった。万能銃を低出力にして生け捕りにしたいのだが、有効距離が短いのが難点である。一方サムの銃は旧式の拳銃なので、あまり近づく...
「ジョー!」 私は叫んだ。うずくまったジョーから、かすかな声が聞こえた。 「そいつとは別行動するふりをして……隠れてついていったので……盗聴の内容も聞いていました……アレキセイが……暗記し...
最初の音が鳴った瞬間、目の前に壮大な地平がひらけた。 そこへ、次々にいくつもの楽器の音が重なる。やがてそれらは躍動する網目となり、聴き手をまだ見たことのない、しかし確かにどこかに存在する「大地」へ運...
「大地が『まだ』存在しないとは、どういうことですか? 『ニフェ・アテス』が題材にしている大地は、遠い昔に海の底に沈んでしまったのですよね」 私は長老アトラに聞いた。左右にはまだ「畑」が続いている。 ...
レムリは、はずむような足取りで歩き出した。私とアレキセイは、レムリのあとについて、茶色く柔らかい地面に踏み出した。 歩きながら、あらためて周囲を観察すると、ここもやはり人工空間であることがわ...
アレキセイの演奏は、どうしてこんなにも心を揺さぶるのだろう。 曲目は、ジョーがカテリーナの家の前で演奏したのと同じ「ニフェ・アテス」だ。ジョーの演奏技術もなかなかのものだが、アレキセイのそれは、素人...
「発掘現場の作業員にも、休日はあります。宿舎は現場の近くにありますが、休みの日になると、たいていみんな現場専用のエレベーターに乗って、上層階に遊びや買い物に出かけます」 アレキセイは階段を降り続けな...
「きみを尾行していたマスチフ人はサムと言って、彼こそが音楽アカデミーの代理人(エージェント)だ。きみが下層へ向けて出発したあと、きみの家にやってきて、トトノフスキイ氏の研究ノートを盗み見した。...
あたりを埋め尽くすキノコの中に、こちらと同じく防毒マスクをつけた若猫が立っていた。銀猫人特有のしなやかなたたずまいに、キノコが発するふしぎな青い光と防毒マスクの異様さが加わって、現実とは思えな...
翌朝——といっても下層世界に朝日は射さないので、暗闇の中を——我々は出発した。 地図と高度計と方位磁石で現在位置を推定し、構造躯体の鉄骨がむき出しになっている中を、なんとか階段までたどり着いた。途中...