古代ギリシアのへそまがり

ソクラテスの弟子テオプラストスが書いた『人さまざま』(岩波文庫)は、ちょっと面白い本だ。
テオプラストスは、当時のギリシアの庶民の気質、態度などを30ほど挙げ、その欠点も含めてユーモア交じりに温かく冷静に記している。
テオプラストスが語っている項目は例えば、空とぼけ、粗野、おしゃべり、恥知らず、けち、いやがらせ、へそまがり、迷信、しみったれ、ほら吹き、臆病、独裁好み、貪欲などだ。

それら気質や態度についての短い定義をまず述べ、具体例をあげていくスタイルは、さすがに古代ギリシアの哲人・文人だと納得するが、話しのネタが庶民の人間模様なので、なんとも言えないユーモアが文章いっぱいに広がる。これが、『人さまざま』の魅力だ。

例えば「へそまがり」の項は、「へそまがりとは、言葉使いの点で、態度の無礼なことである。そこで、へそまがりの人とは、およそ、つぎのようなものである」と始まる。
テオプラストスによれば、「挨拶をされても、挨拶を返さない」のも、へそまがりだ。「道でつまずきでもすれば、きまってその石に悪態をつく」、「唄うことも、詩句の朗唱も、踊ることも拒む」というのも、その例にあげられている。

また「横柄」の項には、「横柄とは、自分自身以外の他の人びとを軽蔑することである」と定義がある。
続いて、「相手が誰であれ、自分の方から先に近づいて言葉をかけたりはしない」、「道をゆくときは、誰に逢おうが、下を向いたまま物も言わない。だが、そのときの気分によっては反対に上を向いたまま物も言わない」などと例があがっている。

トルコ西岸に近いレスボス島の洗濯屋の息子として生まれ、庶民の暮らしを見てきたテオプラストス。『人さまざま』を注意深く読んでいくと、日常生活のなかで気持ちよく挨拶とやりとりをしないことを無粋だと思っているのが分かる。
ギリシアの暮らしのなかでもコール&レスポンスがとても大切にされていたことが、随所から感じられるのである。

今日もコール&レスポンス!

テオプラストス著 『人さまざま』 岩波文庫

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