絵を塗れば即ち塗り絵ではないらしい

いっそ「塗り絵になる」という選択肢について考えて見る

いっそ「塗り絵になる」という選択肢を考えてみる

今、地球では「塗り絵」がたいへん流行していて、猫も杓子も塗り絵なのだそうだ。杓子はともかく猫も塗り絵とあっては、私もやらないわけにいくまい。そこへ折良くホテル暴風雨「塗り絵コンテスト」である。

さっそくBFUギャラリーに説明を聞きにいった。

そうしたらこれが難しいなどというものではない。知らない方のために説明しよう。塗り絵とは、黒い色で描かれた絵の上に、多色で色を塗る行為のこと、またはその行為のために描かれた黒い絵のことである。

黒い絵のないところに色を塗るのは塗り絵ではないのか?というのがふつうはまず気になるところだろう。答えは否で、そういう行為は「絵を描く」部類に入り、塗り絵とは称さないらしい。しかも、黒い絵の上にただ塗ればいいのではない。「自由に楽しんで良い」といいながら、無関係な絵柄を、黒い絵が見えなくなるほど分厚く塗るのは一般には「紙の再利用」であって「塗り絵」ではないのだという。

根掘り葉掘り聞いても釈然としなかったが、ひとまず部屋に塗り絵を持ち帰ることにした。

すると、途中で出会った2002号室のシャルル大熊さんが、「塗り絵なら任せなさい」とたいそう得意そうに言うので、教えてもらうことにした。色鉛筆やクレヨンという、色を塗る道具も貸してくれるという。

しかしこれが大変なのだ。シャルルさんもまた「自由に」と言うのだが、黒い色で囲まれた領域の内と外とは違う色に塗り分け、領域外には色がはみ出さないように塗るのが暗黙の決まりごとだというではないか!原則的には決まりを守ってこそ変調が生きる、などと言い出す。しかも、色鉛筆は耳で持ったり遠隔操作するよりも手で持つのが地球らしい流儀だとか、何だとか、これは私には難しすぎると、次第に継続が危ぶまれてきた。

そこで一度はあきらめたのだが、ふと思いついて、地球で見つけたおもしろいもの、砂つぶや石や猫の足跡や毛や苔などを多色に変色させて、絵の上に生やしてみることにした。

やれやれである。でもなかなかおもしろかった。シャルルさんに見つかっておこられないうちに出してしまおう。

猫丸塗り絵

地球の風物をたくさん盛り込んだところがポイントだ。いかがだろうか。

それから、杓子がどうやって塗り絵をするのか、どなたかご教示いただけませんか。