湯布院映画祭で見た中堅入江悠の「シュシュシュの娘」、俊英小島央大の「火の華」

夏恒例の湯布院映画祭に参加して来た。2本注目に値する映画を見た。公開済みだが、見損なっていたものだ。今回は、作品ならびに監督を、是非とも力を込めて紹介したいと思う。

「シュシュシュの娘」監督:入江悠 出演:福田沙紀 吉岡睦雄 根矢涼香ほか

「シュシュシュの娘」監督:入江悠 出演:福田沙紀 吉岡睦雄 根矢涼香ほか

まず、2021年8月公開、46歳の中堅入江悠監督の「シュシュシュの娘」。快作。監督には「SRサイタマノラッパー 3部作」「ビジランテ」「あんのこと」など好きな作品が一杯ある。最初は自主映画で出発し、今はメジャーな大作も撮る監督だ。

この「シュシュシュの娘」が作られたのは、コロナ禍で映画が上映されず、俳優やスタッフも映画作りが出来ず苦しんでいた時期。監督は初心に戻り、自分で金を出し自主映画を作ってミニシアターを廻ってミニシアターを守りたい、という思いで作ったのだ。
コロナになり、数日徹夜で一気にシナリオを執筆。スタッフは、若い大学生などを集めて合宿して製作。

こんな話だ。平凡な女の子である未宇(福田沙紀)は地方の市役所に勤務。親しい上司が上から公文書改ざんを指示され自死したため、忍者の家系である彼女は、何と、吹き矢で復讐を果たしていく。
改ざんとは外国人排斥の問題。この外国人排斥テーマは既に2017年の「ビジランテ」でも描かれていた。参政党の進出のかなり前に、監督は映画で取り上げているのだ。また、公文書改ざんは、財務局職員の赤木さんが自死した森友学園事件を想起させる。

数日で書いたシナリオのせいか、前半は平凡だが終盤盛り上がる。宴会場で、次々と毒矢で悪者を殺していくシーンは映画的で異様な興奮を覚える。リアルではなかろうが、映画の中では十分にリアルなのだ。監督が大好きだと言う東映ヤクザ映画の、耐えて最後に爆発する構造と似ている。
しかも、この映画、ユーモアも忘れていない。未宇と親しくなる酒屋のお兄さん役の吉岡睦雄の演技も面白い。お爺さん役の宇野翔平もとぼけていていい。
監督と色々話をして、本当にナイスガイ、熱い男だと感じてファンになった。これから応援したい。

監督:小島央大 出演:山本一賢 柳ゆり菜 松角洋平ほか

監督:小島央大 出演:山本一賢 柳ゆり菜 松角洋平ほか

好きな映画をもう一本! 昨年の「火の華」も興味深い。南スーダンの自衛隊のPKO活動に従事し、武装勢力と戦闘になり、目の前で仲間が殺され自分も相手の少年兵を射殺してしまった若い隊員が帰国し、除隊後、新潟の花火屋で修業する。
彼がPTSDを克服する話と、テロ組織が日本政府重要人物の子供を誘拐したため、主人公が救出に向かう話を組み合わせた作品。面白いが、テロ組織に加えて中国マフィアを絡ませたりして、登場人物が多く、時に人物の行動動機が分からず、細かいところまで理解できないのが惜しまれる。

かし、表現の質が相当に高い。随所にモノクロのシャープな映像が入るし、画面の構図がいい。例えば、中国系マフィアの一員が射殺される時の構図なんて本当に決まっている。日本海をパンで写すのもいい。クライマックスたる、華麗な花火の打ち上げの映像もいい。加えて、音楽もいい(これも監督)。

この小島央大監督、弱冠32歳。東大の建築を出た人物。主役の山本一博と組んで第一作「JOINT」を撮り、この第二作は彼と共同で脚本を書いて演出もしている。彼は、新作「メモリィズ」(2026)でも音楽を担当しているし、シンポジウムでの話しぶりも、力みもなくスラーと論理的な言葉が続く。これぞ、クールでクレバーなマルチ才能を持った人物だと言う気がした。

ただ、彼は、色んな事象に、入江悠監督のように本気で怒っているという感じが持てなかった。映画の話を面白くするために、硬派の社会問題を入れてみただけ、いう気がした。
例えば、ネタバレだが、主人公が花火師の修業をしているのに、裏で武器を作って売って金を儲けたりしている。見る側はその理由が腑に落ちないのだが。監督は、統計を取ってみると、新潟の地域に、武器の売買が多いという背景的知識は説明されていたが。

さて、主役の山本一博は中々カッコいい。滋賀県から来た名物常連参加者がいみじくも言われたように、監督と俳優の関係は「黒澤と三船」の関係に喩えていいかと思う。
とにかく、監督は才能がある。しかも、ロビーで何人かと一緒に話したが、クールだが気さくである。「ボク、段取りが悪くって、撮影中スタッフに怒られてましたよ」、って言っていた。かなりの大物だ。都会の高校でなく、静岡の県立高校出身だと聞いた。そこも、親近感がある。監督には精進を期待したい。

(by 新村豊三)

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