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というわけで今日から通常更新です。
ところで、「門松」の第一印象を覚えていますか。
私は覚えています。子どもの頃、「門松」というものがあることはすでに知っていたものの、プラスチック製のミニチュア門松、「門松」と呼ばれているけれど置き型のオブジェじゃない方のシンプルな松飾り、そしてイラスト化された門松くらいしか見たことはありませんでした。それが、あるお正月、近所を散歩していたら、門構えも立派で広々した庭に大木の植わった家があり、その前にとても大きな、本物の門松が飾られていました。笹の葉や松、梅の花などの飾りの上に斜めに切った竹、というのがよくある門松のフォーマットですが、いわゆる門松らしいプロポーションで、なおかつ本物の竹を使うと、相当大きなものになるのだとその時初めて気がつきました。
「すごい」「かっこいい」「きれい」という気持ちもあった一方、これはかなり変なものだぞという印象もありました。
何せとても大きくて手のかかる細工です。手間暇かけて松と竹と梅を切ってきてあの面白い形に作り上げ、お正月のほんの数日間だけ飾る。しかもみんなが当たり前のようにそれをする、受け入れる、という奇妙さはどうでしょう。
今では、まったく同じものを目にしても「おっ、立派な門松あるね」くらいにしか思いません。決まった風習を面白がるという段階に入っているからで、これはとても複雑なプロセスだと思います。
物事をちょっと引いて見る外側の傍観者の目と、否応なく自分もその一部に組み込まれていることを飲み込んで受け入れる覚悟のようなもの。その風習がもたらす喜びや合理性と、反面の決まりきった儀礼的なつまらなさだの大人の事情だのや、物質的・時間的資源の浪費という側面。もろもろを同時に感じつつ、まあちょっと面白くないこともないよねコレ、という感覚は、子どもの頃にはありませんでした。
今、門松の第一印象を再現しようと思うと相当極端な例を出さねばなりません。
一晩寝て起きたらなぜかパラレルワールドに来ていました。何もかも昨日までと同じなのですが、なぜか家々の前におかしなものが飾ってあります。「こ、これって何?」と恐る恐る聞いてみると、「何言ってるの、お正月といえばこれでしょ、『門首』じゃん。毎年飾ってるよね?」などと言われる。
樽の上にカニのハサミと豚のしっぽと孔雀の羽と人間の首が飾ってあるオブジェです。さすがに本物を使うのはちょっと、という時代にはなっていて、マネキンの首などの作り物です。
一体どういうわけでこんな手間暇をかけて、首とかハサミとかしっぽとかをちょん切って(ちょん切ったふうのものを作って)樽の上に飾るんでしょう。いやそもそもは豊穣とか戦勝とか魔除けとか権力の誇示とか、と由来を説明されればふ〜んそうかくらいは思うけどさ、でも結局のところどういうわけ?だってほら、例えば首じゃなくてもいいわけでしょ、松とか竹じゃダメ?意味わかんないどうして松と竹なの……って言われても……ほら、そこはそれ、例えばだから。で、これお正月だけ飾ったらどうするの?え!?捨てちゃうの?
などと、思いませんか。
初めて本物の門松を見たときの私の印象はこれに近かったと思います。
正月早々なんでそんな気味の悪い話を始めるんだ、とお怒りはごもっともですが、第一印象というのは侮れない、という話を今日はしたいのです。
第一印象には、言語化できないけれど直感で得た非常に重要な情報が含まれているから信頼すべき、という面もあります。
一方、後で振り返るととにかくトンチンカンなことを思っていることもあります。
そしてそのトンチンカンをよく検証してみると、単に見た目が似ている、名前が似ている、などのちょっとした類似性に知らず知らずフォーカスしてしまい、別の何かの印象に引きずられるなど、初めての体験なのにすでに偏見や思い込みが入り込んでいたりもします。
他のものにはあまり影響されない、自分の身体感覚で感じたものも含まれている。
このいずれにしても「第一印象」を正確に記憶しておくことは何かの役に立つし面白い、と思うのです。
世の中がどんどん変わって新しいものが出てくるので、今年も「第一印象」には事欠かない毎日になりそうで楽しみです。
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