仰山和尚が師匠の潙山和尚と交わした会話です。
潙:「なあ、もし新参の僧がノコノコやってきたら、オマエならどうやって実力を測るかな?」
仰:「そんなの簡単ですよ!」
潙:「ほう! どうするんだい?」
仰:「まず僧が目の前に来るじゃないですか。そこで私は払子を持った手をあげて「おい、オマエさんにコレはあるかな?」と尋ねます。
で、その僧が何かアクションしようとしたら、すかさず「それはいいけど、アッチはどうなんだい?」と尋ねるのです!」
潙:「・・・な、なんという凄腕じゃ!!」
同じような話が馬祖和尚と弟子の百丈和尚の間にもありますね。
馬:「オマエはどこから来たんじゃな?」
百:「山の下からに決まってるじゃないですか。」
馬:「途中で人に逢ったじゃろう。」
百:「いや、それらしい人には逢いませんでしたね。」
馬:「・・・なんで逢わないんじゃ?」
百:「逢っていたならばとっくに和尚に示しています。」
馬:「オマエ、その芸風はどこからもってきたのじゃ?」
百:「申し訳ありません。私が悪うございました。」
馬:「・・・いや、悪かったのはワシの方じゃ。」
・・・ワケがわからないのは毎度のことですが、実はこの2つの会話は同じことについて語られているのです。
もしも「五老峰に登ったか?」などと尋ねられたなら、ちゃんと物事を考えている人であれば「そりゃえらいこっちゃ!!」と叫びだすべきところなのですが、意識の低い人だと何も考えずに「登ってませんが何か?」などと答えてしまう。
仰山和尚も「ダメこりゃ」と思ったのならばその場で怒鳴りつけるとか殴りつけるとかしておけば、その後のグダグダは避けられたと思うのですが、「廬山に行ったことにならない」などとおっしゃる。
これを優しさと言わずしてなんとしましょう。
―――――つづく
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