オオカミになった羊(後編48)by クレーン謙
──首のうなじからジャックを抜き取り、私は元居た自分の世界へと戻ってきた。 ゆっくりと目をあけると、私は自分の仕事場である『コモリ・サイバー探偵事務所』に居た。 目も眩むし、その上、頭の中が引っ掻...
──首のうなじからジャックを抜き取り、私は元居た自分の世界へと戻ってきた。 ゆっくりと目をあけると、私は自分の仕事場である『コモリ・サイバー探偵事務所』に居た。 目も眩むし、その上、頭の中が引っ掻...
明けましておめでとうございます。 とても大変な時代となり、地上全ての人々がこの影響を受けてしまっています。 それこそ、アマゾンの奥地に住むような先住民でさえ、現在進行中のこの事態から逃れら...
呼びかけるソールの方を振り向いたアリエスの顔からは、すっかりと生気といったものが抜け落ちていました。 アリエスは力なく微笑み、そして口を開き、ソールに向かって何かを言いますが、殆ど聞き取る事...
羊村に侵入し、通商大臣ヘルメスの邸宅を急襲したアセナとアヌビス族の戦士達はヘルメスの末娘アンジェリアを捉え、ヴィーグリーズの谷へと戻りました。 アセナとしては、本当はこんな真似はしたくはなか...
羊歴1620年第12の月、オオカミ族は最新兵器を手にしたキメラ族と共に、羊兵に占領されたヤルンヴィドの森を奪還しました。劣勢であった筈のオオカミ族は、キメラ族とアヌビス族と同盟を結ぶ事により、...
王の執務室に入ってきたショーンを、ファウヌス三世とアルゴー大公はじっくりと観察しました。 腰を低くして振る舞うその羊は、確かに他の羊とは違う気配が漂っているかのようです。 ショーンは頭を垂...
──近々大規模な戦闘が開始されるという噂がメリナ王国の臣民の間で噂されるようになり、やがては羊の若者が徴兵され始め、日を追うごとにその戦闘が現実味を帯びてきました。 ここ王都バロメッツでも、...
その朝も、何の変哲も無い朝だった。 今にも世の中が変わろうという時には、朝はいつもこのように明けるものなのかもしれない。 自宅を出た私はドローンに乗り、都内の自分の事務所へと向かった。 ...
高層ビル群の上空に浮かんだ満月を見ていると、何故か狼の遠吠えが聞こえてくるかのようだった。 「──最初から説明した方が良さそうね、コモリさん」 とアンドロイドのエリは言葉をつなげた。 私...
羊村通商大臣ヘルメスは、さして信心深い羊ではありませんでした。 それどころか、神の存在など全くと言っていいほど信じていなかったのですが《天使》と出会ってから、その心境にも変化があったようです。 今...