IQ 2500

担任の先生は、ユー君の知能テストを見て驚きました。
その知能テストによれば、ユー君のIQ(知能指数)は2500もあったのです !

ユー君は小学生にしては頭がいいとは、担任の先生も気づいていたのですが、そこまでだとは思いもしませんでした。
「なんて事だ!アインシュタインですら、IQは190だと言われているのに ! 」
担任の先生にはIQ2500というのが、どれぐらい頭がいいのか、さっぱり分かりません。
ただ言えるのは、ユー君は自分よりも遥かに頭がいいという事だけです。

それは、そうでしょう。
なにせ、ユー君は学校のテストは全て100点ですし、先生でさえ解けない難しい数学の問題を解いてしまうのですから。
勿論、ユー君は世界中の地理や歴史も知っています。難しい本もいっぱい読んでいます。
だから、もう先生はユー君には何も教えられないのです。

今日もユー君は学校行きましたが、先生に教わる事は何もないので、しょうがなく一人で物理学や哲学の勉強をしていました。
学校の図書室にある本は、ユー君には物足りないので、ユー君は国会図書館で本を借ります。
IQ2500もある天才児が現れた ! という事でマスコミの取材が学校に来ました。
インタビューアーの質問にユー君はスラスラと答えるので、大人たちは皆舌を巻きました。
ユー君は、一躍有名な子供になりました。

ユー君は学校の理科室にこもって、色々な実験や研究を始めました。
ーーその気になれば、ユー君は世界を変えるような発明もできるでしょう。
きっと、ノーベル賞も、いつかはとれるかもしれません。
ロケットを作って、火星に行って帰ってくる事なんか、ユー君には容易いに違いありません。

IQが2500もあるものですから、その気になれば、世界を支配できるかもしれません。
ユー君は何十カ国もの言葉が喋れるのです。
ある日、学校でこんな事がありました。

担任の先生が授業をしている時に、ユー君は先生の教えている内容に間違いがあるのに気がつきました。
ユー君は立ち上がり、その間違いを指摘しました。
先生はユー君の指摘に対して何も言えません。
確かに、ユー君の言っている指摘は100パーセント正しいのです。
……でも、クラスメート達は誰も、ユー君を尊敬したり、褒めたたえたりはしませんでした。

「みんな、頭がよくないから、僕の言っている内容が理解できないんだろうな」
ユー君は心の中でそう思いました。

このように、ユー君は何でも知っていて、何でも作れるのですが、ただひとつ出来ない事がありました。
ーーどういう訳か、ユー君はあたたかいスープが作れないのです。

料理実習の時間に、皆であたたかいスープを作ったのですが、何回やってもユー君にはあたたかいスープが作れません。
さあ出来た ! と思い、スープを皿に盛り付けると、たちまちの内にスープは冷め切ってしまうのです。
ユー君は、悔しくてしかたがありません。
他のクラスメートは全員、あたたかくて美味しいスープが作れるのに……。

ユー君は、ありとあらゆる料理本を読みあさり必死で勉強をしました。
そしてユー君は理科室で『あたたかいスープ製造機』を作り始めました。
その機械には世界最新の技術が詰め込まれています。
さあ、きっとこれで、あたたかくて美味しいスープが作れるでしょう !

ユー君はクラスメートや先生達を呼び『あたたかいスープ製造機』の完成披露会を催しました。
皆が集まると、ユー君は機械の中にスープの材料を入れて、得意げに機械のスイッチを押しました。

ブーン、ガタガタギッタン、と大きな音を立てながら『あたたかいスープ製造機』が動き始めました。
しばらくすると、チーンという音を鳴らし機械が止まりました。
どうやら、スープが完成したようです。

湯気が立ち上る機械の側まで行き、ユー君が蛇口をひねると、蛇口からあたたかいスープが出てきました。
とても美味しそうです。
ユー君は蛇口から流れるスープをスープ皿に注ぎます。
ところが。

スープ皿に注がれたスープを、テーブルの上に置くと、すぐにスープは凍りついてしまったのです!
何回やっても同じでした。
暖かかったスープは、皿に入れられてテーブルの上に並べるとカチカチに凍ってしまうのです。
まったくもって、不思議でした。

不思議に思ったクラスメートのアイちゃんは、試しに同じ材料を使って調理台の上でスープを作ってみました。
とても美味しくて、あたたかいスープが出来ました。
皆は、アイちゃんが作ったスープを「美味しい、美味しい」と言いながら飲み干しました。
アイちゃんはクラスの中でも、一番勉強ができない子です。
でも、誰よりも美味しいスープが作れるのです。

悔しくて、とうとうユー君は涙を流しながら泣き始めました。
ユー君が流した涙が、凍りついたスープに落ちました。
すると、凍ったスープが溶け、湯気を立て始めました。
凍ったスープが、あたたかいスープになったのです。

湯気が立つスープを先生が飲んでみました。
「美味いぞ、このスープ ! 」
先生がそのように言ったので、子供達も次々とスープを飲み始めました。
ユー君の作ったスープは、とてもあたたかくて美味しいスープになっていたのです。
クラスメートは皆、喜んでスープを飲みました。

不思議なことですが、それからというもの、ユー君は普通の子供の知能に戻っていました。
もう、ユー君はIQ2500もある天才児ではありません。
たまにユー君は、自分が天才児だった時のことを思い出すのですが、それでもよかったのかもしれません。
もう、ユー君は担任の先生が間違えた事を言っても、何も気にならなくなりました。

かわりに、ユー君はあたたかくて世界一美味しいスープが作れるようになったのですから。

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