番外編・帰省〜コロナ下における帰省は不要不急か。あなたの決断を尊重します

「妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 第7回(番外編) 帰省〜コロナ下における帰省は不要不急か。あなたの決断を尊重します」

子供の頃、帰省といえば北海道の母の実家に行くことであった。小さい時は父の膝の上で飛行機に乗り、大きくなると一人前の料金がかかるので、船で移動したこともあった。つまり、帰省とは自分自身が移動することだと思っていた。この立場は今も変わらないが、田舎に住んでいると盆や正月は町に人が増えるのである。北海道は観光地ということもあり当然観光客が目立つのだが、老夫婦の住む家に子供のはしゃぎ声を聞くと、帰省してきたのだとわかる。あるいは、20歳くらいの若者が、コンビニの外で「久しぶり」などと声をかけ合っているのを見ると、どちらが地元にとどまって、どちらが都会に出たのかと、いらぬ想像をしてしまう。そしてその姿を見て、必ずしも都会に出たからといって、服装が洗練されるわけではないことが判明する。

今は西暦2020年である。後にこのエッセイをご覧の方のためにあえて説明するが、今年のお盆はコロナウイルスの影響で帰省者は激減した。日本トレンドリサーチのアンケート結果によると、例年帰省している人のうち今年も帰省すると答えた人の割合は3分の1であった。テレビニュースに映った空港ロビーや新幹線ホームの人影はまばらであった。今年のお盆休みは皆、どのような気持ちで過ごしたのだろうか。

私自身は就業規則上3日間の休みであり、夏の暑い時期に熱帯の大阪に帰るなど金をドブに捨てるようなものなので、毎年帰省はしない。つまり、いつもと変わらないお盆を過ごした。とは言え、国道を走る車やバイクは明らかに少なかった。北海道では半年間も乗れないバイクを所有することは贅沢であり、私もお金に余裕があればバイクで北海道を回ってみたいという気持ちもあるが、まずは免許を取る必要がある。

東京ではお盆期間中も不要不急の外出を避けるよう呼びかけられていた。不要不急にあたる行為として東京都は「用事なく出歩く」、「密閉された場所に行く」、「人と接触する」、「大人数の集まり」を挙げている。しかし、これらの基準は曖昧で、「散歩は用事?」、「何畳までOK?」、「立ち話もだめ?」、「大人数って何人から?」などと明確な基準は示されていない。おそらくこれらには大なり小なり科学的な裏付けがあるはずだが、それも示されないまま判断を都民に丸投げしているのである。「何歳からおじさんか」といった命題であれば、少々心にかすり傷を負う程度で済ませられるが、コロナウイルス感染防止となると重症化して命を落とす危険がはらんでいる。

判断を丸投げされたのであれば、自己の判断で対策を行うのが筋である。つまり不要不急であるかどうか自分で判断しなければならない。不要不急は広辞苑によれば「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」とある。つまり「不要かつ不急」と解することができる。

さて、上の図を見てほしい。この図は横軸に要不要、縦軸に急不急をとったマトリクス図である。図の右半分が必要な事項、また、上半分が急な事項である。ここに挙げた項目は人それぞれ違うだろうが、私個人の認識としてご覧いただきたい。例えばトイレは急にもよおしてきて、行かないという選択肢はない。つまり、要急の代表例であることについて異論はないと思う。一方、カラオケについては世の中で最も不要でかつ不急なものの代表例であると私は思っている。

不要不急の外出は、この図の左下の領域にある行為のうち、外出を伴うものということになる。つまり、カラオケ、合コン、旅行、外での運動である。3月の自粛要請では花見も不要不急の外出として対象となっていたが、桜の開花期間は短く、急を要するのは明らかであるので、私の判断基準からすると不要不急の外出にはあたらない。

私は合理的に生きたいと思っている。であるならば、図の右半分の行為だけを行って生きてゆけば合理的である。しかしながら、私は演劇鑑賞も好きだし、読書も好きだし、さらに旅行好きである。むしろ、非合理的な行為ほど人生の楽しみと言っても過言ではない。

新しい生活様式の中、非合理的行為をどのようにして合理化するかが問題である。帰省はSkypeやZoomといったビデオチャットで代替することが可能か。あるいは旅行はGoogleMapのストリートビューを見るか、テレビの紀行番組を見ることで代替可能か。これらのことを自分の欲求レベルと比較して、自分自身で決める必要がでてくる。

余命幾ばくもない両親と会うのに、ビデオチャットで代替できるだろうか。人それぞれマトリックス図に配置された項目は違うだろうし、同じ人でも日によって変わってくるはずである。判断を個人に委ねられたのならば、その判断は尊重されなければならない。そして、各人が決めたことに対して他人が口出しすることのない社会を希望する。

<編集後記>
※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第7回「新春縮小版:ぐっちー、実家に帰省する」 と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。リンク先に聴き方も詳しく載っていますので、ぜひ合わせてお楽しみ下さい。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第7回「帰省〜コロナ下における帰省は不要不急か。あなたの決断を尊重しますいかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

今回は番外編、生き物ではなく「帰省」がテーマです。というのも、「妄想旅ラジオ」の対応回である第7回配信が、同一テーマで「生き物」「旅」「食」を語るいつもの三部形式ではなく、ぐっちーさんが帰省したお話などを中心とした新春縮小版のフリートーク回だったので、こちらでも番外編を挿入することになりました。ラジオの放送は、「帰省」の話と言いつつ「**虫」について語るというオヤジギャグ回でもありました(さて**に入るのは何? きっともうおわかりですね。ぜひ聴いてみてください)。

帰省の「要」「急」についての考察は当サイト妄想生き物紀行のためのオリジナル、もちろんマトリックス図もです。送別会より花見がだいぶ「要」だとか、カラオケより合コンが少し「急」だとか、いろいろなものが滲み出ていて味わい深い図です。みんなでマトリックス図を作って見せ合うと盛り上がりそうです。

というわけでマトリックス図大会開催……ではなくて、

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にて、今回もぐっちーさんにあれこれお聞きしてみたいと思います。

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ぐっちーさんとお話ししたもようは、来週こちらのサイトでまとめてお伝えします。Twitterでいただいた質問やコメントは記事内でご紹介させていただくことがあります。どうぞよろしくお願いいたします。では、Twitterでお会いしましょう!

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