ハト〜平和の象徴であるハトと人間の共存を模索する

「妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 第11回 ハト〜平和の象徴であるハトと人間の共存を模索する」

ハトは平和の象徴として描かれることが多い。これは旧約聖書の創世記にあるノアの箱舟の話に由来する。堕落した生活を送る人間に対し神が怒り、大洪水を起こしてしまうのだが、神はノアに箱船を作らせ、世界中の生き物1つがいだけをそこに収容させた。ノア達は洪水から生き延びたのだが、そのことを知らせたのがハトである。洪水から47日後、ノアはハトを放ち、ハトがオリーブの枝をくわえて戻ってきたことから、洪水が終わったことを知るのである。神と人間の和解を象徴してハトとオリーブが平和のシンボルとして描かれるようになったそうである。

日本国内でみられる主なハトはドバトとキジバトである。都市部の公園にいて、外回り営業のサラリーマンやおじいちゃんにパンくずなどの餌をもらっているハトはこのうちドバトである。全長は約30cm、首の周りは光沢のある緑色をして、羽は黒や灰色をしている。朝は日の出とともに活動を始め、公園などで餌を探す。昼は噴水などで水浴びをしたり、日向ぼっこをしたりとのんびり過ごす。夜は建物の軒下や橋桁などのねぐらに集まり休む。おじいちゃんの生活とあまり変わらないかもしれない。

ところが、ハトの生態は平和的であるが、人間に対しては必ずしも平和的ではない。ハトが直接人間に攻撃的な行動を起こすことはないが、糞による害が問題となることがある。駐車場に止めておいた車に糞をかけられたことは多くの人が経験するだろうが、その程度であれば洗い流せば済む。しかしながら、橋桁などのインフラに糞を残し、そこから金属の腐食が加速して橋が崩落してしまった例もある。

また、そこまで深刻ではなくても自宅のベランダに巣を作ってしまったという報告も多い。ハトは元々外敵から身を守るため崖などの窪みに巣を作って生活する。この環境が現代ではマンションのベランダに似ていることからこのような被害が多数報告されている。では、このような被害に遭わないためにはどのような対策があるだろうか。

まず、ハトがベランダにやってきた場合、ハトは周囲の様子をうかがい、安全な場所かを確認する。この時に素早く古いCDや鳥よけグッズを使って追い払い、安全な場所ではないことをアピールする必要がある。もし、手遅れでハトにとって居心地のいい場所と認定されてしまうと、今度は仲間を呼んで集団で居座られる可能性がある。私も学生時代に大学の近くに住む友人の家によく出入りしていたので、ハトの気持ちがよくわかる。

ベランダにハトが巣を作ってしまった場合、そこは居心地のいい場所から営巣地へと格上げされたと考えていい。こうなると、ハトの気持ちとしてはここは「俺の家だ」という思いが強いため、人間がベランダに出ただけでも攻撃的な行動に出てしまう可能性がある。また、ここで雛がかえり、巣立ってしまっても、ハトの帰巣本能により何度も被害を受ける可能性もある。こういったことにならないように早めの対策が必要である。

パーソナリティ:「もしもし、テレフォン鳩生相談です」

相談者:「もしもし、よろしくお願いします」

パーソナリティ:「まず年齢と家族構成を教えてください」

相談者:「5歳、夫婦2羽と子供2羽で生活しています」

パーソナリティ:「今回はどういったお悩みですか」

相談者:「不動産の悩みなのですが、人間から立ち退きを迫られています」

パーソナリティ:「持ち家ですか?」

相談者:「今年の春に下見をしていて、いい場所を見つけたんです。しばらく通って、安全を確認して、自分たちで巣を作って、卵を産んだところに突然人間から立ち退きを迫られました」

パーソナリティ:「自分たちで巣を作ったということは持ち家ということで、今回のご相談は人間の求めに応じて出て行かなければならないのか、ということですね」

相談者:「すでに雛がかえって、4羽暮らしなのですが、立ち退かなければならないのでしょうか」

パーソナリティ:「今日は弁護士の鳩山由起子さんに来ていただいているので相談してみましょう」

鳩山由起子:「初めまして、大変でしたね」

相談者:「はい、何度か下見に来ていて、パンが置いてあったこともあったんです」

鳩山由起子:「そうですか、歓迎されていると思っていたのに、急に退去要請を受けて豆鉄砲を食らってしまいましたね」

相談者:「私たちは出て行かないとダメでしょうか」

鳩山由起子:「結論から言えば、今すぐ出て行く必要はありません」

相談者:「子供たちが巣立つまで居て良いんでしょうか」

鳩山由起子:「まず、人間社会には鳥獣保護法という法律があって、野生動物を殺したり、威嚇したり、卵を処分したりした場合、100万円以下の罰金または1年以下の懲役に処せられる場合があります」

相談者:「そうなんですか」

鳩山由起子:「更に、居住者を立ち退かせるには6ヶ月以上前に交渉する必要があります」

相談者:「ということは、今すぐ出て行く必要はないのですね」

鳩山由起子:「そうです、子供たちが巣立ってからゆっくり出て行ってください」

相談者:「安心しました」

パーソナリティ:「おわかり頂けましたか?」

相談者:「ありがとうございました」

このようなやり取りがあったかどうか分かりませんが、ハトにとってみれば各段階を踏んで平和的に生活基盤を徐々に構築していると考えているはずである。巣を作ってから立ち退きを迫られても居住者の権利は保障されなければならないはずだ。日本の法律では鳥獣保護法に加え、立ち退きに関する交渉は1年前から6ヶ月前までに行わないとならない。つまり、今から立ち退き交渉を迫られても6ヶ月間は住み続けられることとなる。6ヶ月もあれば雛が巣立つまで十分である。人間はそれまで手出しできない。ハトの巣を無理矢理壊して追い出すことは平和の象徴であるハトに対して、暴力で対抗する最も野蛮な行為である。こうならないためにも早めの対処が重要であることは言うまでもないが、平和的解決が望まれる。

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第11回「ハト と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。リンク先に聴き方も詳しく載っていますので、ぜひ合わせてお楽しみ下さい。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第11回「ハト〜平和の象徴であるハトと人間の共存を模索するいかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

ハトの世界も衣食住の確保、ハト関係、に加え「対人間関係」も考えねばならずなかなか大変そうですね。

さて妄想旅ラジオでハトといえば仕事をサボる営業マンに伝書鳩にハトイチロー。

そしてホテル暴風雨でハトと言えば、脱力ファンタジー宇宙ハトSF『イチダースノクテン』(主人公と巨大鳩の出会いから始まるとても面白いお話です)

暖かな日差しを受けながら公園のベンチに座っている点田一(てんだ・はじめ)を取り巻くように鳩が集まってきているのだが、点田は鳩が滅法苦手な上に、鳩の狙いが……

ですが、今回新たに「テレフォンハト相談」という強力メンバーが仲間入り。鳩山由起子先生よろしくお願いします。というわけで、

Twitterでぐっちーさんと話そう企画!

にて今回も、ハトについて、外回りの営業について、ハトの巣について、鳩山由起子先生についてなどなど、ぐっちーさんにあれこれお聞きしてみたいと思います。

斎藤雨梟のTwitterアカウント @ukyo_an  にて

↓こんな感じで↓ツイートしますので、よろしければみなさまもツイートへ返信してご参加ください。

ぐっちーさんとお話ししたもようは、来週こちらのサイトでまとめてお伝えします。Twitterでいただいた質問やコメントは記事内でご紹介させていただくことがあります。どうぞよろしくお願いいたします。では、Twitterでお会いしましょう!

ご意見・ご感想・ぐっちーさんへのメッセージは、こちらのコンタクトフォームからもお待ちしております。

*イベントのお知らせ*

延期になっていた「ホテル暴風雨」4周年記念リアルイベントが開催中です。東京・池袋の「ギャラリー路草」にて、展覧会とトークショーのイベントです。かわいいハトの絵も展示中。詳しくはこちらを!

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