サーバルはサーバルキャットとも呼ばれ、ネコ科の肉食動物である。主にアフリカのサハラ砂漠以南に生息し、サバンナ地帯を生活の場としている。形はネコを基準とするとその頭を半分の大きさにしたようなフォルムをしており、ネコと比べて体が大きく筋肉質である。サーバルはジャンプ力が高く、自身の体長の3倍以上になる3mほど飛び上がることができる。
アフリカにはサーバルの他にチーター、ライオン、ヒョウなどのネコ科の動物が生息している。同じネコ科動物なのでおそらく共通の祖先から別れたと考えられるが、現在でもチーター、ライオン、ヒョウ、サーバルなどの類似の動物がいるように、ネコの祖先がいた頃には複数の近縁種がいたはずである。その中でも今から2500万年前に生息したプロアイルルスという生物がネコの祖先であるといわれている。
プロアイルルスが生息していた2500万年前には他にも「シロウトアイルルス(仮)」や「プロコイルルス(仮)」や「プロアイリリス(仮)」などが生息していたはずである。「シロウトアイルルス(仮)」は何をやっても中途半端で、素人の域を出ることができず生存競争に負けてしまい絶滅した。「プロコイルルス(仮)」は恋多き人生だったものの一人を愛することができずに孤独のまま絶滅してしまった。「プロアイリリス(仮)」は非常に繁殖力が高く数が増えたものの急激な環境変化について行けず絶滅した。一方でプロアイルルスは生息数を増やし、その子孫のひとつはプセウダエルルスに分かれてその後ネコに進化していくのである。
ところが、我々の目には現在生き残っているネコを中心として、その先祖をたどる1本の系統しか見えていない。その裏には数多くの絶滅したネコの仲間がいるのだが、生息数が少なかったり生息域が限定的だったりと、化石として発見されていないためその存在を認識することができていない。
進化はルールが突然変わるゲームである。今まで野球の世界一を決めるワールドベースボールクラシックが開催されていたのが、決勝戦では急にサッカーで優勝チームを決めるようルールが変わってしまうと考えてもいい。このルール変更は大雨、地震、気温の上昇、そして隕石の落下などの天変地異を意味する。ルールが変わった後、しばらくは限られたチームで試合が行われてたものの、すぐに組織力に特化したチーム、機動力を生かしたチーム、カウンターを狙うチーム、高さを武器にしたチームなど、多くのチームが生まれることとなった。
アフリカに住むネコ科の動物であるライオン、チーター、ヒョウ、そしてサーバルはそれぞれ狩りの方法が違う。ライオンはメスによる組織的な狩りを得意とし、チーターは高速で獲物を追跡する。ヒョウは獲物を待ち伏せして襲いかかり、サーバルはその跳躍力で時には小鳥を捕らえることができる。ライオンとヒョウは同じ大型哺乳類を獲物としているが、ライオンは昼行性、ヒョウは夜行性と活動時間を分けている。
このように空間や獲物が類似した生物同士は競合関係にあり、どちらか一方が絶滅して排除されてしまうのが一般的であるが、活動時間や獲物の大きさを分けることで共存することができる。これを棲み分けと呼ぶ。銀行と消費者金融、トラック輸送と鉄道輸送と海上輸送のように競合関係にある業界が、それぞれの特色を生かすことで共存している状態に似ている。
生物が生態系内で競合関係にありながら安定的に生息できている状態をその生物の生態学的地位(ニッチ)と言う。ライオン、チーター、ヒョウ、サーバルは狩りの方法だけではなく空間や時間を分けて生活しており、それぞれの生態学的地位を保っている。最近はニッチという言葉が生物学以外では隙間産業の意味で使われることがあるが、ニッチを狙ったとしても安定的に存続できるか保証できない。
トラック輸送、鉄道輸送、海上輸送ではそれぞれ個別配送と大型輸送の違いによるニッチが形成されているが、これからドローンによる空中輸送が参入するとニッチが脅かされる可能性がある。一番影響を受けるのがトラック輸送だろう。新規の会社が参入するのか既存のトラック輸送会社がドローン部門を作って対応するのかわからないが、生物と同様に急なルール変更があって”進化”を余儀なくされるのかもしれない。
(by ぐっちー)
※このエッセイ「妄想生き物紀行」第67回はポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」第67回「サーバル」と関連した内容です。ポッドキャストもお聴きになると一層お楽しみいただけますのでぜひどうぞ! ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。旅ラジオ」は、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です、詳しい聴き方などは「妄想旅ラジオ」のブログを。
ぐっちー作「妄想生き物紀行」第67回「サーバル〜進化はルールが突然変わるゲームである」いかがでしたでしょうか。
今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当・ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。
こんにちは!
図表が出てきたとたん絶滅した猫の祖先の近縁たちのヴィジュアルがどんな設定をされているのか身を乗り出してしまいました。ああ、ルイス・キャロルはプロコイルルスをモデルにあのキャラクターを造形していたのかぁ(注:妄想です)
「ほんの少しの偶然が人間の運命を決してしまう」というのは、たとえば文学のテーマなんかとしてもよく出てきますが、それが人間だけでなく生命全体の宿命だから、一見めちゃくちゃな話でも説得力を持ちやすいのでしょうか。ドローンに期待が集まる輸送業の未来、果たしてどこまで進化するんでしょう。「どこでもドア」が発明されたりしたらそれを決定打に終了しそうです。
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