アリ〜世界中のアリの数は20,000,000,000,000,000匹いて、その炭素量は12,000,000トンらしい

一般的にアリはハチ目アリ科に属する昆虫の総称である。世界には100万種以上いるとされ、日本には2800種いるとされている。2022年、香港大学の研究チームが地球上のアリの数と重さを推定した(The abundance, biomass, and distribution of ants on Earth)。その報告によると地球上にアリは20,000,000,000,000,000匹(2京匹)いると推定され、その重さは炭素重量だけで1200万トンと推定された。アリは熱帯地方を中心に世界中に生息しており、たくさんいるだろうというざっくりした感想しか持っていなかったが、具体的な数字を突きつけられるとなんだかリアリティが増した。

地球の人口は2022年11月に80億人を突破したことが話題となったが、平均体重60kgとして、80億×60kgは480,000,000,000kgである。つまり約5億トンということになる。ただし、この数字は全体重の合計なので炭素量に換算すると5億トン×0.4(水分含有率60%)×0.5(炭素含有率50%)で約1億トンが炭素量となる。これでようやくアリと比較することができる訳だが、アリが1200万トン、ヒトが1億トンなのでヒトの方がまだ多いものの、ヒトの8分の1程度の炭素量だと推定される。

1mmほどの小さなアリがヒトの重さと一桁しか違わないほど生息しているということは驚きである。さらに香港大学の研究チームによるとアリの分布は熱帯地方に多く、それらの生息状況が環境変化などをモニターする上での基準になるとしている。老眼が入ってきた私の目では見分けが付かないくらい小さいアリを調べることで、環境変化がどのような影響を与えているか知る助けになるかもしれないという二重の驚きである。

私は世界中にアリが何匹いるか想像もしなかったし、その重さがどれくらいなのか考えもしなかった。個体数と重さが分かっていれば単純なかけ算で概数を求められることに気付かされる。そうとなれば、他の事象も計算できるのではないかと考えた。そこで計算してみたのが海にある塩の重さである。海の体積に塩分濃度をかけてやれば塩の量が計算できるはずである。

地球の表面積は約500,000,000 km2である。これは地球の半径6,371kmが分かっていれば球の表面積を求める公式に当てはめることができる。一応断っておくと今回の目的は概数を求めることなので、地球を球体として扱い、体積は立方体として計算する。調べたところ海洋は地球の表面積の70%で、平均の水深が約3,800mであった。つまり地球の海水の総量は500,000,000 km2×0.7×3.8kmで、答えは1,330,000,000km3である。ここで、1m3を1トンと仮定すると、1km3は1,000,000,000トンで全海水の重さは1,330,000,000,000,000,000トンである。私は今、何度もゼロの数を確かめている。それだけゼロの数が多すぎて混乱しかかっているが、頑張ってお付き合い願いたい。

ようやく全海水の重さが判明した。ここからはゼロが多すぎるので指数表記すると、全海水の重さ1.33×1018トンとなり、そこに海水の塩分濃度である3.3%を掛けると1.33×1018トン×3.3×10-2となる。つまり、約4.4×1016トン(4.4京トン)という計算結果になった。

どのくらいの量になるのか全く想像が付かないので、今度は円錐状に積み上げたらどのくらいの高さになるか計算してみた(塩水だけに)。まずは塩の重さが分かっているものの、体積が分からない。塩の比重は2.16だが積み上げていく場合は結晶の間に空気が入ってしまうので概ね1m3=1トンと考えていいらしい。

そこで底面と母線が45度で交わる円錐を考えたときの計算方法はこうだ。円錐の高さをhと仮定すると、底面は半径hの円になるので、円錐の体積(V)は底面積(πh2)×高さ(h)÷3で求められる。つまりV=1/3πh3なので、この式を変形するとh3=3V/πとなり、hを求めると高さが判明する。h3=3×4.4×1016m3/π=4.2×1016m3になり、h3を求めるとh=347,603mと出た。つまり高さ347kmに達する。実に富士山の100倍近い高さになるのである。

ここまで数字をこねくり回してみたが意外と面白かった。ほとんど単純なかけ算、割り算で求められ、桁数さえ間違わなければ大体の数字が導き出せる。今度はアリ1匹が1cmの巣穴を掘ったとしたら、世界中の巣穴の長さが地球何周分になるか計算してみたい。

(by ぐっちー)

※このエッセイ「妄想生き物紀行」第73回はポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」第73回「アリ」と関連した内容です。ポッドキャストもお聴きになると一層お楽しみいただけますのでぜひどうぞ! 「妄想旅ラジオ」は、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組(ポッドキャスト)です。インターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。詳しい聴き方などは「妄想旅ラジオ」のブログを。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第73回「アリ〜世界中のアリの数は20,000,000,000,000,000匹いて、その炭素量は12,000,000トンらしい」いかがでしたでしょうか。

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こんにちは!

推定し計算しているうちに「推定ハイ」になってしまったことがよくうかがえるタイトルですが、私も念のため確認……と計算していたらすっかりハイになりました。掛け算割り算しているだけで世界の秘密に触れた気分になれてこれは楽しいです。「京」なんて、日常でなかなかお目にかからない数と遊べるのもいいものです。国家予算でも「兆」くらいですから。一京は1016、つまり1のあとにゼロが16個続いたやつですよ。アハハハハハハ!

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