理由なき反抗

【黒沢秀樹】自身初のワンマンライブ映像作品を作りたい、制作応援プロジェクト

季節の変わり目ということもあって、このところ子どもが急に熱を出したり、元気になったかと思えばまたぶり返したりと落ち着かない日々が続いている。
このところの気温の急激な変化には大人でもなかなか追いつけず、どんな服を着たらいいのかわからない状態なので仕方がないが、そんな時、子どもが風邪をひいて面倒を見ているうちにその風邪を養育者がもらってしまうことは日常茶飯事だろう。

回復力の強い子どもが元気を取り戻してテンションが爆上がりするくらいのタイミングで、大人の方が症状のピークを迎えてしまいどうにも厳しい状態になることもあるが、この一言で説明するには難しい状況を何かわかりやすい言い方にできないものかと考えた結果、自分は風邪の「周回遅れ」と呼ぶことにした。
若い頃はすぐに起きた筋肉痛でさえ、一日二日たってからやってくる年齢になると、これはもう周回遅れになっても仕方がない。
そういうタイミングでは子どもの機嫌もジェットコースターのようにめまぐるしくアップダウンをするので容易にピットストップをすることもできず、もう誰かペースカーを走らせてくれないかと思うこともあるが、残念ながら育児というこのレースにはレギュレーションなどというものは存在しない。

息子はこの数日でかなりインパクトのある言葉を使い始めているが、中でもかなりダメージを受けているのはこんな言葉だ。

「やだ、絶対、絶対しない!」
「いらない、捨ててきて」
「父さんはいじわる!」
「あっちいって!」
「父さんはだいだいだいっきらーいっ!」

挙げ句の果てに「もう出てって!」と寝室のドアを閉めたかと思うと、再び開けておもちゃを放り投げ、またバタンとドアを閉めるという演出までされ、まるでアメリカ映画で恋人から追い出されるダメ男になった気分である。

ある日は何が食べたいかと聞くと「エビのチャーハン」と言うので特別にエビを入れた豪華版を作り、スーパーのお惣菜コーナーで買った大好きなカニクリームコロッケと果物までつけたと言うのに、「ちがうっ!果物いらないー!ごはんだけがいい!」と言い出し、地団駄を踏み出した。
りんごと梨が食べたいと自分で言ったにもかかわらず、いらないとはどういうことか。

「自分が食べたいって言ったじゃん!」

「違う!そうじゃない!もうあっちいって!」

「そんな言い方をする子は父さん好きじゃないな」

「父さんはいじわるだよ!」

などというやりとりがしばらく続き、涙とよだれにまみれながらパンチを繰り出す怪獣に対峙していたが、よくよく話を聞いてみると、同じお皿にごはんと果物が乗っていることが許せず、そしてコロッケも別のお皿に置き、スプーンも自分で引き出しから選びたいということだった。
ひとつひとつのこまかいこだわりと要求(というか一般的にはただのわがまま)をひとしきり全て受け入れて用意をするとようやく納得したらしく、「父さんのおひざで食べさせて」というところまで辿り着くことができた。

一般的にはちょっと甘やかし過ぎかと思われるかもしれないが、自分としては子どもがその時に「なにがどう気に入らないと感じているのか」をひとつひとつ紐解いていくことで見えてくる、子どもの認知能力の度合いを検証していると思うことにしている。
まさか4歳児が同じお皿の上にチャーハンと果物が乗っていることをそんなに気にするとは予想もしていなかったわけで、結果、この子はそういう部分にとても敏感である、ということを知ることになった。
こういうことは疲れて眠い時や体調が悪い時、そしてお腹が空いている時など、体調に大きく関係しているということもあるが、言葉が使えるようになった分、自分の意思を正確に言葉で伝えたいのに、うまく表現できずにそれを察してもらえないことが苛立ちにつながっていることもあるのかもしれないと思う。

養育者に何をしてもらっても気に入らない時期というのは必ずあると思うが、最終的に大人になれば自分の機嫌を取れるのは自分だけである。そのためにも自分の感情の動きを適切に、伝わる形で誰かに表現できるのはとても大切なことだろう。子どものわがままはつい叱ったり無視してしまったりすることも多いが、時にはその向こう側にある気持ちをじっくり聞いてみることも大切だと思っている。「理由なき反抗」というのは実に的を得た表現だと思うと同時に、反抗には必ず子どもなりの理由があるはずなのである。

(by 黒沢秀樹)

『できれば楽しく育てたい』黒沢秀樹・著 おおくぼひでたか・イラスト

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※編集部より:全部のおたよりを黒沢秀樹さんが読んでいらっしゃいます。連載のご感想、黒沢さんへの応援メッセージなど何でもお寄せください。<コメントフォーム
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