トラとだるま 変貌の60年

みなさまこんにちは。毎日暑いですね。暑くてぼんやりしていると色々なことを間違い、季節につれ年につれ繰り返し損ねたように変化するものへ心がゆきます。

まずは、これは暑くなくても間違う、紛らわしいからやめてほしい、もう本当にやめてほしい。と、最近思ったお話から。

トニー・ザ・タイガー ヴィンテージモデル

暖かい時期になると朝食にシリアルをよく食べるのだが、先日買ってきた「フルーツグラノラ」というシリアルのパッケージに「トニー・ザ・タイガーのステンレスボトル プレゼント」という文字を見つけた。密閉できて持ち歩ける小型のボトルで、これがまたなかなか素敵なデザイン。

トニー・ザ・タイガーとは、ケロッグの「コーンフロスティ」(昔は「コーンフロスト」だったが改称)のパッケージに登場するトラのキャラクターで、日本では1963年から活躍しているとのこと。1986年の大モデルチェンジ前後でだいぶ見た目が変わったらしく、モデルチェンジ前のヴィンテージタイプの「トニー」が可愛い。そのヴィンテージトニーの絵のついたステンレスボトルが、シリアルの袋についているトラのマークを12点分集めて送るともれなくもらえるというキャンペーンなのだ。

何それほしい。

↑現役のトニー

↑こっちがヴィンテージトニー。これが好きだ。

というわけで早速集め始めたのだが、ケロッグのどのシリアルにもトラのマークがついているわけではないという意地悪設定だ。なにゆえ。

私の好物「玄米フレーク」にはついていない。甘くないシリアルが好きだが、手軽に入手できて味が好みのものとなると非常に種類が限定され、近頃「玄米フレーク」ばかり。これだけではさすがに飽きるので、フルーツやナッツの入った色々なシリアル(甘い)を買ってきて、甘くないのと半分くらい混ぜるという食べ方をしている。よって、甘い方のシリアルを、「トニーのボトルがもらえるやつ」優先で購入することに決め、トラのマークを集め始めた。

しかし、集めてみるとなんだか変だ。

おわかりいただけるだろうか、右端の背景の青いトラのマークだけ、何かが違う。最初はちゃんと見ていなかったが、ヴィンテージタイプではなく現行のトニー・ザ・タイガーのような気がする。あと点数が書いてない。

公式サイトを見て驚いた。こんなことが書いてあったのだ。(画像は「日本ケロッグ」サイトより)

応募券見本画像では応募できない。そりゃあしょうがない。

あと赤地に「K」のKマークもダメ。「玄米フレーク」についてるやつだ。不満はあるがそれは知ってたからもういい。それよりも。

背景と鼻が青いトラのマークは「2018トニーマーク」だそうで、無効!

わかりにくすぎる。同じ「ケロッグ」のシリアルについてる「トラのマーク」なのに無効って!2018年限定ならなぜ半年も経ったのにつけたまま販売してるんだろう。

「ポケモン」が欲しいと子供にせがまれ買ってきたら「ポケモソ」だったとか、「グッドガイ人形」のつもりで買ったら殺人人形チャッキーだったとか、

伝説の第1作が従来のHDリマスター版+2Kスキャン・デジタルニューマスター版で国内初ブルーレイ化! ……だそうです。怖い。

 そんな悲劇も世の中にはままあるとはいえ、本家本元が罠をはって待ち構えてるってどうなんでしょう。鬼か!

これは対象商品ではなく、青いトニーが付いている要注意商品。甘すぎず美味しいのに。

そんなこんなでもう7月。現在手元にある「有効な」トニーマークは4枚。応募締め切りは8月末なので、12枚集めてボトルをもらうのは無理かもしれないと諦め始めている。そんなにたくさん食べないし、マークを集めるために大量に買い置きするやる気にも収納場所にも恵まれていない。その時にはせめて6枚集めてトニーの買物バッグをもらおうと思う。

ヴィンテージトニーのグッズが欲しくてトラのマークを集めているみなさん、間違って鬼トラップにかからないよう(トラだけに)気をつけましょう。対象商品はこちらです。

同じく1960年代から活躍、変貌を遂げたキャラクターといえば

さて同一のキャラクターの姿がだんだん変わっていくという事例はよくある。特定の企業や商品のキャラクターにもあるし、漫画の登場人物の造形が少しずつ変わったり、アニメのキャラクターの造形が新シリーズが出ると同時に変わったりする。

80年代以降おおむね、よりシンボリックに、シンプルに、丸みを帯び、親しみやすく可愛らしく変わる傾向があるように思う。アニメ版の「サザエさん」(©︎長谷川町子)や「ゲゲゲの鬼太郎」(©︎水木しげる)などもそうだろうか。ケロッグの「トニー・ザ・タイガー」は、旧モデルの方が丸っこく可愛らしいがどこかにリアルなトラらしさを残しており、現役モデルの方が体型は筋骨隆々とリアルとも言える一方いかにも「キャラクター」的デフォルメが効いている、という、時代の流れに合っているような逆行しているような、微妙なモデルチェンジだ。

などと考えていたら、むしろ激しい逆行、謎の変貌を続けるキャラクターもいることに思い当たってしまった。

そのキャラクターとは……

我らが「だるまちゃん」(©︎かこさとし)!!

加古里子作「だるまちゃん」シリーズの第1作は「だるまちゃんとてんぐちゃん」で、初版は1967年。私も幼児の頃読んだが、てんぐちゃんの真似をしたがるだるまちゃんの前に「うちわ」に似たものや「履き物」がずら〜っと並べられる場面などが印象的でかなり好きだった覚えがある。

絵も好きで、子供なので自分でそんな表現はできなかったが「かわいいばかりでなくパンチの効いたところがなんかいい」と感じていたのだと思う。

これだ。だるまちゃんの足に注目。

 「だるま」と「天狗」、それも可愛らしくゆるキャラ的なアレンジをあまり加えていないところがすごい。普通だったら子供が親しみを持つには無理があると思ってしまいそうなところだ。

この「だるまちゃん」シリーズは他に何作も出ていて、子供の頃に読んだという方も多いだろう。だが、近年まで続々と新作が発表されていたことはご存知だろうか。

とらのこちゃんもいるよ!

 何年前のことか忘れてしまったが、「加古里子展」に行った時、これまでの「だるまちゃんシリーズ」の絵を時系列に並べて一覧するという展示があったのだが、それを見て驚いた。

私はほとんど初期の「だるまちゃん」しかよく見たことがなかったのだが、その後「だるまちゃん」のビジュアルはかなり変化していた。どう変わったかというと、まずだんだん背が高くなっている。

初期の「だるまちゃん」は、仮に中にふつうの人間が入っているとした場合、ぱっと見るとふくらはぎの途中あたりから足が外に出ている感じだ。それが、次第に露出部分が増えていくと言ったらいいのか、ひざ下から出ている→太ももから出ている といったふうに、脚が長くなっているのだ。

見比べると、当初からして「子供に親しまれるかわいいキャラクター」の範疇からちょっとはみ出しそうだっただるまちゃんが、一種なまめかしく、生々しく、ますます「可愛い」領域を力技で引きずり伸ばしながら変わってきている。

2018年発表の最新作はこちら、「だるまちゃんとキジムナちゃん」

どうです。顔も心なしか怖くなっているし、脚だけでなく腕も妙に長い。ちょっと不気味なくらいだ。でも可愛いと思ってしまうのはなぜなんだろう。それに「キジムナちゃん」って……キャラクターの発想も相変わらずどうかしている上、ビジュアルも容赦がない。さすが、素敵だ。

この傾向はいつまで続くのか、今後のだるまちゃんはどうなるのか、固唾を飲んで見守っていたのだが、同じ2018年の5月、加古里子さんが逝去された知らせを聞いた時には随分悲しかった。

以前「かわいくてみみしろい」と題した文章で、「かわいい」という言葉の無尽蔵な広がりについて書いたが、それを60年かけて、「かわいい」なんて言葉は介在させずに追求したのが加古里子さんだったのではないのか。日本の「かわいい」界へのキティ先輩の寄与はよく語られるが、並べて語りたいのがだるまちゃんだ。だるまちゃん、すごくみみしろい(実際耳があるなら白だろうし)。加古里子さんの偉大さに今さら感じ入っている。

トニー・ザ・タイガーに関しては旧モデル派の私だが、だるまちゃんに関しては、新旧どちらも捨てがたい。

だるまちゃんの新作がもう読めないのは残念だが、トニーの今後の変貌は観察し続けたい。旧トニーをキャンペーンでおしてきているあたり、先祖返り的大モデルチェンジの日が近いのだろうか。青トニー、危うし。


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