紙書籍大好き・アナログ派のための電子書籍事始め(2)

みなさまこんにちは。

この記事は、ホテル暴風雨の出版レーベル「ホテルの本棚」から『プロの絵本作り』(1)(2)が刊行された記念に、本大好き、紙書籍大好き、でも電子書籍もわりと好き、な私が電子書籍について書くシリーズの2回目です。

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1回目の前回は、電子書籍とは何だ? どうやったら読めるのか ということを書きました。

今回は電子書籍(主に紙書籍と比べての)メリット・デメリットについてです。一口にそういっても、一般読者にとって、本を作る人にとって、読書という文化全体にとって、それを支える社会にとって、と色々な見方があります。今回は「一般読者にとって」という視点で書きたいと思います。

電子書籍の(読者にとって)いいところ

1.軽い、かさばらない

持ち歩きに良い

当然ながら、電子書籍のデータ自体は重量という概念とば別軸の存在。たくさん本をダウンロードしたからといって、端末が重くなるということはありません。

私は本が好きで、出かける時に本を持って行き、電車の中などでよく読みます。読むのはわりと速い方なので、本一冊だと途中で読み終わってしまうことが多く、だいたい二冊以上の本を持ち歩いていました。文庫本やソフトカバーでも二冊は重い。

電子書籍の場合、スマートフォンで読めば本を何冊持って行っても追加重量はゼロ。私は今はKindleの読書端末をよく持ち歩きますが、それでも薄めの文庫本一冊程度の大きさと重さで、本を百冊以上入れることができます。「不意にできた待ち時間で大河小説全巻一気読み」など電子書籍でしかし得ないわざです。

保管にも良い

携帯性だけの問題ではなく、本は家に置いておくにも場所を取るものです。電子書籍ならばその心配が無用です。

私はまあまあ多くの本を所有していますが、現在、事情によりかなりの数を手放さざるを得ず、ならば名残を惜しんで寸暇を惜しんで読むかというと、処分のための整理が悲しく嫌すぎて放置しているという有様です。新しく購入する本の多くが場所を取らない電子書籍となっています。引っ越しなどで同様の事情を抱える人も多いのではないでしょうか。電子書籍ならば「場所がなくて手放す」というお別れは来ません。物質性から自由である以上、燃えてしまったり水濡れで傷むこともありません。

2. 蔵書検索・文字列検索がすぐできる

「あのページを今読みたい」問題への電子書籍ならではのアプローチ

本を読んでいると「あの箇所、あのページをもう一度読み返したい、確認したい」ということがあります。

紙の本ならばバラバラバラ〜っとめくって自分の視覚記憶を使って見つけ出すところで、それを別段手間と感じたことはありませんでした。

が、文字が小さく多く、込み入った内容だったり、延々とよく似た内容が続く本だったりすると案外時間のかかるものです。

電子書籍の場合、デメリットのところでも触れますが、こうした「パラパラパラ〜っとめくって全体を見る」ことができません。

その代わり、特定の文字列を入力して検索することならば得意です。最初に書いてあった説明を今一度確認して先を読み進めたいだとか、小説のあのシーンをもう一度読み返したいという場合、キーワードさえ思い出せれば非常に速く、便利です。

「何巻まで持ってたか思い出せない問題」への対応が万全

上述した「文字列検索」は、文字の本でだけ使える機能です。つまり、「文字を文字情報として認識している本」の場合です。漫画や雑誌などは、紙書籍の画面をそのまま画像にしてあることがほとんどで、中の文字は画像情報として認識されています。よって、漫画のセリフなどで文字検索をかけて特定のページを見つけ出すことはできません。

ですが、漫画の電子書籍にもいいところがあります。

書店で好きな漫画を見つけて、「あれ? 何巻まで買ったっけ」とわからなくなることはありませんか。私はあります。漫画本には大抵袋がかけられていて中を確認できないため重複して買うという事故も起こりがち。

その点電子書籍ならば、既に持っている本かどうか、すぐに検索して探すことができます。本のタイトルに関してはもちろん文字情報として扱われているので、漫画だから検索できないということはありません。間違って買おうとしても「あなたはこの本を**年*月*日に購入しています」という表示が出て教えてくれもします。ただし、「楽天で既に買ったものをamazonで買ってしまった」という失敗は十分あり得ますので、複数のプラットフォームで電子書籍を購入していて、どこで買ったか忘れた場合、全部検索するのは多少面倒です。

3. メモを残す、しおりを挟む、他端末との同期などの機能がある

紙の本でも、どこまで読んだかしおりをはさんだり、気づいたことをメモしたり、付箋をはさんだりすることはできます。ですが、それは家での落ち着いた読書に適した行為ではないでしょうか。また、まさに私がそうなのですが、本にしおりをはさんだり書き込んだりすることが好きでない人もいるでしょう。となると、紙書籍の進捗状況は「記憶に頼る」のみです。しかも、常に同時並行して何冊かは読むのだからややこしい。そんなことでわからなくならないのか? と聞かれたら、もちろんわからなくなるのです。

電子書籍は途中で本を閉じても、次読む時は閉じる直前のページを表示してくれるので、「どこまで読んだか覚えておく」ためのしおりは基本的に不要ですが、進捗状況の目印としてでなく、後で読み返したいところに何箇所でもしおりをはさみ、メモを書き加えることができます。入力方法は端末に依存しますが、「画面に出てきたキーボードをタッチして入力」が一般的です。電車の中で立ったままでもまあできるかという操作です。任意の場所をハイライトしたり、その部分をSNSでシェアするという機能もあります。

外出先ではスマートフォンで、家では読書端末やパソコンで、と異なる端末で同じ本を読みたい場合、「最後に読んだページに同期する」という機能を使えばすぐに続きから読み始めることができますし、「しおり」や「メモ」も、同じアカウントと紐づけられていればすべての端末に反映されます。

総じて、「いつでもどこでも読む」「読書の記録を残す」のに便利な機能が多いと言えます。

4. 売り切れ・乱丁落丁・ページ折れや匂いがなく、状態の良い本がその場ですぐ買って読める

もうそのままタイトルの通りですので、以下、紙書籍だとこんな場合に残念な出来事が起こりがちだということを列挙します。

みなさまは、巻数の多い本はまとめて大人買いする方でしょうか、バラバラに揃える方でしょうか。私は圧倒的にバラバラ派です。「古本屋さんで今日ここで買わないともう出会えない希少な本のセットと出会ってしまった」などの場合を除けば、バラバラに揃えます。

主な理由は、「今すぐ読みたい本だけが欲しい」という傾向のためです。いずれ読みたいから買っておく、ということをあまりしません。「今日読みたい本を今日手に入れる。明日の分は明日入手すればいい」と思うたちなので、3巻まで読んで面白かったのですぐ翌日4巻を買いに行くということもあれば、それが一年後になることもあります。一度に買う本はせいぜい二〜三冊までです。少しずつ手に入れる楽しみもまたいいものです。

ですが、「4巻が読みたくてワクワクして書店に行ったのになぜか4巻だけ売り切れている」という悲劇もままあります。電子書籍だとそういうことがありません。

「注文」「取り寄せ」という方法もありますが、私はあれがどうも苦手です。

「今読みたい」のにタイムラグが生じるから、だけではありません。紙書籍には、手触りや存在感という要素も必要で、それを手で確かめて持ち帰りたいのです。嗅覚過敏なので「匂い」を確認して買いたいというのもあります。新品の本でも輸送の途中につくのか、煙草の匂いのする本はあります。煙草臭は、部屋に置いておくだけで匂いが気になるのみならず鼻がムズムズして鼻血が出てくるので私にとっては鬼門です。古書店や図書館で煙草臭のついた本をそれとわかって読むこともありますが、「風通しの良いところにしばらく置いて顔からなるべく離して読む」という手間を取らねばならないので非常に面倒です。

電子書籍の場合、物質としての手触り・存在感・匂いなどが「ない」のはデメリットかもしれませんが、最初から求めていない分楽だともいえます。

5. 文字の大きさやフォントを変えられる

これもまた文字の本限定で、しかも端末・アプリに依存する話ですが、大抵の場合、行間・余白・文字の大きさ・明朝かゴシックか程度のフォントの種類 を好きなように変えられます。中でも文字の大きさは読みやすさに大きく影響するのではないでしょうか。

まずこちらが最小の文字。画面の大きさは6インチ、文庫本よりやや小さいくらいです。

私がいつも設定している二番目に小さい文字がこちら

そして最大にするとこんなことに。

本は夏目漱石著『吾輩は猫である』です。

紙書籍は装丁家やデザイナーといったその道のプロが工夫して文字組やレイアウトを決めているものですし、作家によっては一ページの文字数や行数をあらかじめ意識して、特定の場所でページが変わるよう意図して書くとも聞きます。これらの努力を全部台無しにしているという点では大きなデメリットですが、文字情報としての中身が何より大事という立場から見れば、人それぞれ好きな大きさ・形の字で読めるのはメリットかと思います。近眼・遠視・老眼などで普通の文字の大きさに不都合を感じる人にも優しい形態ではないでしょうか。

6.独特の品揃え

私は新刊書店、古書店、図書館、すべて利用しますし全部好きです。それぞれ置いてある本の種類がまったく違います。もちろん、どこにでも置いてあるロングセラーの本はありますが、それ以外のラインナップに見られる個性にこそ魅力があるものです。

電子書籍の品揃えは完全にプラットフォーム依存なので、ここからはamazonのkindleストアの話に限定して書きますが、新刊書店・古書店・図書館の全部と共有部分を持ちつつ、やはりどれとも違う品揃えです。

現在、紙書籍のすべてが電子書籍化するわけではありません。ですが、新しく、広く読まれそうな本ほど電子版と同時発売というケースが増えています。ですのでkindleストアには「新しい本」もそこそこあります。一方、重版未定在庫切れなどで新刊書店から早々に姿を消す本も多いですが、電子書籍は(販売し続けられない特殊な事情が生じない限り)絶版になりません。ですので、「出てから少し日が経った本」も入手することが可能です。また、長い間重版されなかった(事実上絶版になっていた)本を、出版社が電子書籍限定で出すケースがあるため、「ちょっと昔によく売れていたけれど今は新刊では手に入らない本」もあるのが特徴です。もっと古い、著作権切れでパブリックドメインとなっている本に関しては、ボランティアによりテキスト化・校正された無料の「青空文庫」本のkindle版や、個人が自主制作した廉価版など、紙書籍ではありえない形のものもあります。「古典的名作」「知られざる古い本」「忘れられた昔の本」などが電子書籍として蘇っています。

「新刊書店・古書店・図書館それぞれと品揃えが少しかぶりつつ、独特」という意味がわかっていただけたかと思います。

さらに、個人が大きなコストをかけずに出版できるのも電子書籍の特徴です。作家自身が、出版社から刊行というプロセスを経ずに自作を電子書籍にしているケースも多数(完全新作だったり、雑誌に掲載されたが書籍化されなかったものだったり、過去に同人誌として出したものの電子化だったり色々)ですので、kindleストアは「ミニコミ誌やZINE・自費出版本も置く個性派書店」「同人誌即売会」などとも共通部分のある本屋さんといえます。

7. 本を置きにくい場所でも見やすい(こともある)

本とは読むことで完結している本だけではありません。

主に「実用書」の話なのですが、例えば料理のレシピ本などは、調理しながら台所で見られた方が便利です。紙の本の所定のページを開き、見やすくかつ邪魔にならない場所に固定しておくのはなかなか難しいです。

電子書籍ならば、スマートフォンやタブレットをどこかに立てかけたりスタンドで固定することが比較的容易です。

私が一番便利だなあと思うのは、photoshopなど画像ソフトの学習書やプログラミング、Webデザインの本の電子書籍版です。

こうした本は実際作業をしながら参考にしたいもので、これまでは大きめのクリップでページを開き、机の隅に無理やり立てて見ていました。電子書籍だと、画像ソフトやエディタを操作しながら、別ウィンドウで電子書籍アプリを立ち上げて読むことができて大変便利です。

レシピ本、ストレッチやエクササイズの本、野鳥図鑑やきのこ図鑑など、「現場に持って行って使いたい本」にとっては利便性の高い形態です。

8. 紙書籍より(少し)安い

電子書籍は紙書籍に比べ、紙もインクも不要、倉庫も不要、在庫管理の手間も少ないのだからコストは安いはず……と思うほどに安くはないのですが、出版社が刊行する「紙書籍」「ほぼ同じ内容の電子書籍」を比べると、電子書籍の方がほんの少し安いです。といっても、まったく同価格の本もあり、安い場合も数パーセントから10パーセントくらいのものです。

ですが、電子書籍には「再販制度」が適用されないので、価格は自由です。kindleストアでは毎日の「日替わりセール」や毎月の「月替わりセール」が開催される他、定期的に「*月*日まで〇〇社の文芸書が30%オフ!」などのセールが行われます。また期間限定の無料本(期日が過ぎると読めなくなる仕組み)が出たりします(複数巻ある本の一巻が無料になるケースが多い)。こうしたセールも、amazon、楽天など書店ごとに別に開催されるため、同じ本でも「いつどこで買っても同じ価格」ではありません。冒頭の一部を無料サンプルとしてダウロードできるシステムもあり、「試しにちょっと読んでみるか」「欲しかった本だしこの機会に買うか」と思わされることが多いです。

以上、8項目に分けて電子書籍の読者にとってのメリットについて書きました。続いては、デメリットです。

電子書籍の(読者にとって)まだまだ今ひとつなところ

1. 読みにくい、一覧性で劣る

「読みやすさ」という点で紙書籍の方がまだ断然優れていると感じます。読みやすさにも色々ありますが……

パラパラできない

「文字検索できる」というメリットについては上述しましたが、パラパラっとめくって全体を見渡せればこんな機能は不要という種類の本はたくさんあります。とにかく「パラパラ」は紙書籍の得意とする機能で、電子書籍ではこれができません。

私はもともと、本は中身が大事、「読めさえすればコピーでもいい」「そらんじてしまえば本体は不要」とさえ思っていました。そんな私でも、「紙にインクで印刷され、きっちり製本された紙の本」という物質性のメリットを大いに享受していたのだ、と気づかせてくれたのが電子書籍です。

文字ばかりの本、特にレイアウトにさほど個性のない文庫本などを読む場合、電子化したことでの遜色はあまりない方です。それでも、リズムよく指でページをめくり、一ページをざっと目で見て味わうという紙書籍読書の良さは電子化すると何割かは減じられます。

単に自分がそうだから予測に過ぎませんが、読むのが速い人は、電子書籍にすると少し遅くなると思います。ページを送るたびにひっきりなしに画面をタップする操作が、紙の本のようになめらかに次のページを読むプロセスにつながらず、明らかに読書を「中断」させるのです。画面の切り替わりやゴーストによって目が疲れることもデメリットです。

レイアウトが活かされない

上述のように、「中身第一、読めりゃいい」派の私が、文字ばかりの本を読んでさえ不満があるのです。眼に映るレイアウトの美しさを重視する人にとっては、電子書籍なんぞ存在意義がわからないかもしれません。

私の感覚では、「文字ばかりの本」「絵ばかりの小型の本」は、電子書籍にしても魅力はさほど失われないと思います。

ですが、「絵や図と文字が入り混じった大きめの本」となると、電子書籍には課題が多いです。

こういう本は絵と文字が見やすくわかりやすく美しく配置されていることが重要です。よって、電子書籍化する時、「紙書籍のページをそのまま画像として表示する」固定レイアウトの本になることが多いようです。そうすれば元々のレイアウトは活かされますが、電子書籍を読む時の画面の大きさは大抵の場合、紙書籍だった時のサイズより小さいです。ページ全体を画面で見ると絵も文字も細か過ぎてよく見えず、ピンチして拡大、また縮小して次へ、という操作を経るととても読みにくいです。

かといって、絵や図は画像として、文字はテキスト情報として、と分けて本にしてしまうと、レイアウトは見る人の端末依存になります。図の直下についていたキャプションが次のページに行ってしまうなど、それはそれでデタラメで見にくい本になってしまいます。

固定レイアウトのものをパソコン画面や大型タブレットで見ることでこの問題はやや緩和しますし、いっそ大型のプロジェクターで投影すれば魅力あるコンテンツになるかもしれません。が、「紙媒体で最適化される表現」を洗練させてきたジャンルだけに、(「大型プロジェクター化」も含め)電子書籍リーダーが多様化するか、電子書籍に最適化した別のスタイルを得るかなどのもう一段階を経ない限り、「電子書籍に向かない」種類の本になってしまいそうです。

2. プラットフォーム依存

アプリを選んでしまう問題

前回の記事にも書いたように、amazonで買った電子書籍はamazonの端末かアプリで、楽天で買った電子書籍は楽天の端末かアプリでと、読む道具を選んでしまうところは不便です。

サービス撤退などの時に読めなくなる問題

amazonで買った電子書籍は永久にamazonのクラウドに保存されいつでもダウンロードできるのは便利ではありますが、今後amazonが電子書籍のサービスから撤退したり、amazonが倒産したりしたら面倒なことになります。そういう時には再び、「アプリを選んでしまう問題」が、ちょっとした不便どころか深刻な問題として浮上します。amazonのクラウドがもう使えないしアプリや読書端末も更新されないとなったら別所に自分で保存し、他の道具で読もうとするでしょう。プラットフォームに依存するとは、それが難しいということです。

DRMのロックのないPDFなどで販売している本(amaon以外で)もあり、これならどのアプリでも見られますが、簡単にコピーできてしまうのでは販売形態としてあまり広まらないでしょう。DRMのロックを解除するアプリなどもあり、「個人で楽しむ目的で著作物をコピーする」行為は合法のはずですが、こうしたアプリを使用することは日本では違法だということです。

実際には、もし本当にamazonが撤退したり倒産した場合、第三者がamazonのコンテンツを救出・閲覧するためのアプリや機器を作り出して販売を始めると思います。ですが、そんな非常事態になる前に、より汎用性の高い道具・形式ができてほしいものだと思います。

3.貸し借りできない

面白い本だから人にすすめたいけれど、巻数が多いしいきなり購入をすすめるのもプレゼントするのもハードルが高い。または、面白そうだから読んでみたいけれどいきなり買うのはハードルが高い。

という場面はあると思います。私も面白かった本は人に貸したくなります。貸した結果「今ひとつ合わなかった」「気に入ったので自分でも買った」など色々な反応があり、ある程度好みを知っているはずの友人でも予測できないところも楽しい。

ですが、今の所電子書籍を貸し借りすることは難しいようです。海外では貸している間自分では読めなくなるようなシステムが導入されている国もあるらしいのですが(正確には、例えばアメリカのアマゾン amazon.comで購入した電子書籍ならば日本語アプリを使用していてもレンタル機能が使えるらしいです)。

「端末ごと貸す」ことは可能ですが、これまたハードルが高すぎます。短期間のちょっとした貸し借りができたらいいと思います。もしくは、クラウドに永久保存するのではなく一週間だけ読める料金体系を作るなど、「ちょっと読んでみたい」「ちょっと読んでみてほしい」需要にこたえるサービスがあってもいいのではないでしょうか。

海外の一部の国では「図書館で読まれた回数に応じて作者に還元されるシステム」もあると聞きます。データがどれだけ複製されたか、誰がどの端末でどれくらいのページを読んだか、を把握することは電子データの得意分野です。

コンテンツが生き残るかはつまりどれだけ読まれるかということ。書籍販売だろうと貸本だろうと図書館閲覧だろう友人同士の貸し借りだろうと、何かしらの収益を作った人に還元し、より読まれるようにする工夫は、電子書籍の技術革新でこそうまくできる気がしますが、そのあたりはまだまだのようです。

「中古の本として売れない」というのもデメリットでしょうか。book off などの新古書店や漫画喫茶という営業形態を(著作権者や出版社などの権利を損なうとして)批判していた人にとっては、貸し借りも転売も困難な電子書籍は福音でしかないはずですが、そういう声はあまり聞こえてこない気がします。私が聞いていないだけなのか? いずれにせよ、本が広く読まれることと利益を出すことは場合によっては一致し、場合によっては矛盾するという難しい問題は、電子書籍にそのまま引き継がれているようです。

以上、電子書籍のデメリットでした。メリット8点に対しデメリット3点なので少ないようですが、「読みやすさ」で劣るというのは大きいです。今後の端末、それに販売形態の発展に期待したいと思います。

次回は、「読書」という文化にとっての電子書籍のメリット、電子書籍はどう影響を与えるのか、などについて考えます。

ページトップの絵は、

プロの絵本作り1 本気で絵本作家を目指す人に

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こちらの本の表紙のために描いた絵です。さて元の絵と本の表紙、どこが違うでしょう?

答:表紙では盆栽フクロウを切り抜きましたが、元の絵は背景がついている

ではでは、また次回!


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