将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第39回

いよいよ「第二回こども将棋大会」の日がやってきた。福祉会館六階の会場は将棋好きの小学生たちでうめつくされた。
ちらほらとだが、応援の父母の姿もある。その中にまざって、ひょろりと長身のシュウイチもいた。

正面のかべに大きなトーナメント表がはり出されている。
参加チームは前回より増えて、十四チーム。しかしトモアキたち《青葉小+1》がマークするチームは一つだけだ。
その《と金倶楽部》は抽選の結果、別ブロックに入った。つまり、あたるとすれば決勝戦になる。

開始前にアサ子が驚いたことが一つあった。アサ子のほかにも女子の出場者がいたのだ。北浦小チームの中堅と次鋒で、佐藤ユリカ、エリカという姉妹だ。しかも二人はわざわざアサ子のところに来て、「がんばろうね!」と声をかけてくれた。悪い気はしない。

始まりのあいさつと大会運行の説明があって、十時半に対局が始まった。定刻通りである。
はたして、《青葉小+1》は絶好のスタートを切った。午前中の一回戦と二回戦を、ともに五戦全勝で勝ち上がったのだ。
次々と結果が書きこまれるトーナメント表にも、そんなチームはほかにない。
「ツ、強すぎるぞ、おれたち」
「トーゼンだろ、トーゼン」
トモアキとジュンは喜びをかくせない。

これでベスト4が決まり昼食休憩となる。前回同様、みんなにおにぎりとパックの牛乳が配られた。大きな違いはトモアキたちが午後に勝ち残っていることだ。

アサ子がトーナメント表で確かめると、佐藤ユリカ、エリカ姉妹の北浦小は二回戦で負けていた。がっかりしてるだろうな、と思ったら、ぜんぜんそんなことはなかった。
またやってきて、パチパチ手をたたく。
「すごい、すごい。午後は準決勝ね。応援してるから!」
アサ子たちの活躍を自分たちのことのように喜んでくれる。
アサ子は正直いって、少しとまどった。
(負けてこんな楽しそうな人たちもいる……)
きっと勝つためにやってきたアサ子たちとは考え方が違うのだ。

――――続く

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