『うまそうだな、ねこ』(松山美砂子・さく 架空社)
映画「シンゴジラ」を観たとき思い出したのがこの絵本。共通点は「個体進化」です(笑)。
いつもいつも、ねこにいじめられていたさかな。でもあるとき立場が逆転します。さかなは進化し始めたのです。それも急速に。
陸に上がり、足が生え、牙が生え、巨大化します。さかなの長年の憤懣が呼んだと思われるこの奇跡を、松山美砂子さんは見事な説得力をもって描いています。
読者は、夜ごと進化を遂げるさかなを、ねこと共にドキドキしながら目撃することになるでしょう。
強くなり自信をつけたさかなのセリフがクール。「そろそろ二本足で歩いてみようかと思ったのさ。進化ってそういうもんだろう?」
二本足で走り回る姿は、もはやさかなとは思えません。恐竜か怪獣のよう。そして遠くまで響く声で歌うのです。
「うまそうなねこ おれさまがいつか食べるねこ きょう喰おうかな あした喰おうかな」
さあ、ねこは食べられてしまうのでしょうか?
絵本にしては文章量が多いのですが、巧妙な画面構成でそれを感じさせません。白地と黒地の対照が鮮やかです。
ユーモラスでちょっと怖いお話は、洒落たエンディングを迎えます。お楽しみに。
(by 風木一人)
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