自分を好きになる絵本『ゴドフリーはカエルだよ』(アレックス・ラティマー作 風木一人訳 小学館)

ゴドフリーはカエルだよ

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『ゴドフリーはカエルだよ』(アレックス・ラティマー作 風木一人訳 小学館)

あなたは自分が好きですか?
自然に自分を好きでいられたら幸せです。でも、いつもそうあるのは難しい。
他人とくらべて落ち込んでしまうこともあるでしょう。
自分を好きになれないとき、自分のいいところがわからなくなってしまったとき、それを教えてくれる仲間がいてくれたら!

ぴっかぴかでぽっかぽかの世界で楽しく暮らしていたカエルのゴドフリーですが、ある理由で自信が持てなくなってしまいます。
みんなとくらべてぼくは全然ダメだ……。落ち込んでいるゴドフリーのところへ仲間たちがひとりずつ訪ねてきてくれます。
そして魔法のような言葉をかけてくれるのです。

自分が好きか嫌いか。自分は特別なのか平凡なのか。「自分をどう感じるか」はぼくにとってずっと気になるテーマで、『はっぱみかん』や『おやゆびさん』という作品でさまざまに描いてもきました。
『ゴドフリーはカエルだよ』の翻訳を担当できたのはそういう意味でも嬉しいことでした。自分もずっと抱えているテーマをほかの作家さんがどう描いたか、深く感じることができたからです。

ゴドフリーはカエルだよ 見返しページ

見返しはちょっと古い時代のアメリカ絵本を思わせます。

今年の2月に小学館のMさんから翻訳の依頼をいただきました。Mさんはお会いしたことのない方でしたが、そこは驚きませんでした。ぼくの翻訳や創作の仕事をご覧になって今回の企画にぴったりだと思い、ホテル暴風雨のコンタクトフォームからご連絡くださったのでした。

驚いたのはアレックス・ラティマーさんの作品だったことです。ラティマーさんはこれまでに日本では『まいごのたまご』と『きょうりゅうかくれんぼ』(ともにKADOKAWA)が翻訳出版されており、どちらも大人気で、どちらも聞かせ屋。けいたろうさんが翻訳しています。
聞かせ屋。けいたろうさんとは長いおつきあいで、けいたろうさんがどう思っているかはわかりませんが、ぼくは親しい友人と思っています。いっしょにトークイベントをしたことも3度あります。

それで……正直にいうと、ちょっと申し訳ないなと感じました。けいたろうさんが1冊目2冊目と翻訳してきた作家さんの作品を自分が翻訳することについてです。『きょうりゅうかくれんぼ』に関しては単なる翻訳だけではなく、企画段階からアイデアを出し合って作ったことをけいたろうさん本人から聞いていたこともあります。お二人の間にはすでに信頼関係があるということです。

同じ出版社から同じ海外作家の翻訳書が出るときは、翻訳者も同じ人が選ばれることが多いです。しかし出版社が変わると、同じ作家でも別の翻訳者が選ばれるのが普通のようです。作家も翻訳者も同じだと元の(先に出していた)出版社のイメージがつきすぎているからという理由でしょうか。

Mさんと打合せのときに、けいたろうさんと仲がいいことを話したら、やはりご存じなかったようでした(笑)
そんな、翻訳そのものとは別の複雑な思いを抱えた仕事でもありました。

「ゴドフリーはカエルだよ」と「きょうりゅうかくれんぼ」のダブル平積み

書店では『きょうりゅうかくれんぼ』と並べて平積みされていました♪

けいたろうさんが訳した『まいごのたまご』と『きょうりゅうかくれんぼ』は恐竜絵本の新定番と言えるベストセラーです。
『ゴドフリーはカエルだよ』が売れないとけいたろうさんに対して「恥ずかしい」し、アレックスさんに対して「申し訳ない」です。

売れますように!

(by 風木一人)


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