私が今のマンションに引っ越して11年がたつ。その前に住んでいたのは、「ロジュマンシャトー」と言う名前のアパートだった。木造(軽量鉄骨かも?)2階建だからアパートと呼んで良いだろう。木造とはいえ防音も良く、間取りも使いやすかったので気に入っていたが、問題は名前だった。電話で人に住所を言う時に、「ロジュマンシャトー」というのはなかなか正確に伝えるのが難しいのだ。
いつも「は?」と聞き返されるので、「ラリルレロのロ、ジに小さいユでジュです」と言って説明していた。「シャトー」は誰にでもわかるようで、説明しなくても「ロジュマン斜塔」と書かれたことは一度もなかった。現在住んでいるマンションもややこしいフランス語の名前なので、いつも説明に苦心している。なかなか面倒なものである。
私は、世のマンション、アパート経営者の皆さまに対して、声を大にして申し上げたい。発音のややこしい外国語の名前をつけないでください。住所の説明がとても面倒なのです。
私が子供の頃、私の祖母は小さなアパートの大家をしていた。6畳あるいは4畳半一間、風呂なしトイレ共同、木造モルタル2階建のアパートで、名前は説明するまでもなく「みやち荘」であった。
あの頃の賃貸アパートといえば、必ずと言っていいほど「〇〇荘」(〇〇には大家の名前か町名が入る)であって、カタカナが入るとしてもせいぜい「〇〇コーポ」だった。フランス語の名前などつけたら、銀座のクラブか何かと間違えられたのではないだろうか。
そう言えば最近、「〇〇荘」というマンション、アパートを見かけない。むしろ今の時代、「〇〇荘」という名前はクールジャパンで昭和で美しい国な感じで良いと思うのだが、どうだろう? 大手不動産会社の経営するマンションでは一時期「〇〇〇〇壱番館」といった和洋折衷の名前が流行ったようだが、やはりこれからは「〇〇荘」の時代ではないだろうか。
風木オーナーがホテル経営で巨万の富を築いた暁には、南青山あたりにラグジュアリーでインテリジェントなハイライズマンション「風木荘」を建てていただきたいものである。できれば共用設備として、銭湯をつけてくれると申し分ない。オーナー、よろしくお願いします。