カーン

・・カーン

バットに叩かれたときでもなく
スタンドに飛び込むときでもなく
下降しはじめるあのときがホームランなのだ

見守られるなか
直線のまま彼方へ消えてゆくかと思われたそれが
不意に勢いを失い
カーブを描いて下りに差し掛かる
たとえ物理法則がどう言おうとも
着地点は
以前でもなく以後でもなく
白球がくだりはじめるあの瞬間に確定され
たどり着くべきひとつの座席が輝く

そのとき
すでに一秒前には耳に届いていたはずの音が聞こえる
カーンと音がする


スポンサーリンク

フォローする