「37セカンズ」(原題「37seconds」)トークセッションに参加して

昨年 9月30日の回 で紹介した、障害の成長を描く「37セカンズ」がいよいよ2月7日に公開になった。出来るだけ多くの人に見てもらい話題が広がることを願っている。

映画「37セカンズ」監督:HIKARI 出演:佳山明 神野三鈴 大東駿介ほか

監督:HIKARI 出演:佳山明 神野三鈴 大東駿介ほか

自分の好きな映画について、知識が広がり、より深く理解出来るようになるととても嬉しいものだが、劇場公開前の1月11日、上映とトークセッションが東大の駒場キャンパスで開かれ、これに参加する機会を得た。とてもクオリティが高い有意義な会であり、自分の考えも深まったように思う。今回はこの報告をしてみたい。

主催は「障害者のリアルに迫る」というゼミ。参加者は70~80人だったが、そのうち4分の1が車椅子に乗った障害の方だった。
映画上映の際に、画面には日本語の字幕が付き、また、映っている画面の説明が音声でなされた(例えば「恭子、大粒の涙を流す」)。つまり、これが「バリアフリー上映」なのだと認識した。初めての経験だった。

上映後ゲストと司会者(ゼミの修士一年の女性)のトークセッションが行われたのだが、驚いたのは、発言すると、それが一字一句、場内右手に置かれたボードに文字として出てくるやり方が取られたことだ。(場内左手には、テーブルに4人の方が座り、聞いた発言を瞬時にパソコンに打ち込む。それが、ボードに文字となって現れる)。
すなわち、参加者の中には目が見えない、声が聞こえない障害を持った方がおられ、そのための対応だったのだ。

もう一つ驚いたことがある。ゲストの1人に、東大教授の福島智さんがおられたが、先生は、目が見えない・耳が聞こえないというハンディを持った方だった!
先生はあらかじめシナリオを読んで参加された由。(先生の発言はとても鋭く、さすがは東大の教授。)

ゲストは映画の主役の佳山明さん、映画で彼女の姉を演じた芋生悠さん、そして福島先生の3人で、院生の方の司会で話が進められた。この会は大変に入念に準備されていて感心したのだが、1時間半のトークセッションの後半は、アメリカ在住のHIKARI監督がスクリーンに現れて発言された(私はメカにからっきし弱いのだが、スカイプを使ったのだと思う)。

映画に登場した障害者「くまさん」こと、熊篠慶彦さんも場内におられて発言されたりした。何と彼は「障害者の性」を進めるNPOで活動されており、彼が書いた本を基にして映画も作られていることも今回初めて知った。リリーフランキー主演の「パーフェクト・レボリューション」という映画だ。

次に、このセッションで印象的だったことを述べる。

○福島先生の発言
この映画は障害者の「性」を描いたと言うより、「性」を起爆剤にして少女が自分の人生を前向きに生きる「生」を描いた映画ではないでしょうか。

これは健常者にも当てはまる気がする。我々も何らかの「生きづらさ」を乗り越えようと闘おうとする、あるいはその一歩を踏み出すことからもっと自由な生き方が開けてくるのではなかろうか。

僕も若い頃歌舞伎町に行きましたよ。

この発言は場内の笑いを誘った。大らかな方だ。

○HIKARI監督の発言
アメリカでは脳性マヒの方が主役のテレビドラマもある、日本でも、あっていいと思う。日本を出てアメリカにいると、日本社会がもっとこう変わればいいと思うことが見えてくる。自分は日本人魂を持っているつもり。もっと日本人が自由に生きていけるような映画を作りたい。

以上、大変に感銘を受けた言葉であった。

最後に、ミーハーオジサンとして嬉しかったのは、映画に協力されている女優の小沢まゆさん(奥田瑛二監督「少女an adolescent」で主演。去年、湯布院映画祭で知り合いになった)から、芋生悠さんを紹介してもらったこと。まだ23歳で、とてもキラキラしてしかも誠実な感じが伝わってきて一遍にファンになった。

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芋生悠さんが出ている映画は2017年の「ピンカートンに会いに行く」がいい。若い頃アイドルグループの1人で今はおばさんになった女性が元のメンバーに会いに行くことで、元気を取り戻す。演出がキビキビした佳作。芋生さんは、その若い頃のメンバーを演じている。

(by 新村豊三)

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