韓国映画観客動員数1位と2位の「バトル・オーシャン 海上決戦」と「エク ストリーム・ジョブ」

歴代の韓国映画の観客動員数のトップ5をご存じだろうか。
一昨年までは、

1.「バトル・オーシャン 海上決戦」(2014年 1760万)
2.「神と共にー罪と罰」(2017年 1430万)
3.「国際市場で逢いましょう」(2014年 1420万)
4.「ベテラン」(2015年 1340万)
5.「グエムルー漢江の怪物―」(2007年 1300万)であった。

監督も作品の内容も全くバラバラで、何らかの共通性を見出すことは難しい。(因みに、日本は5本中4位までがアニメで、しかも、その3本が宮崎駿作品。1位は「千と千尋の神隠し」)。

さて、昨年公開された映画が1600万を超えて、歴代2位になった(興行収入は歴代1位)。日本では1月に公開された「エクストリーム・ジョブ」という刑事コメディアクション映画である。

「エクストリーム・ジョブ」監督:イ・ビョンホン 出演:リュ・スンリョン イ・ハニ

監督:イ・ビョンホン 出演:リュ・スンリョン イ・ハニ他

ソウルの警察の麻薬班のチーム5人が、麻薬の取引を行っている犯罪グループを監視して捜査を進めるため、事務所のすぐ近くにチキンの店を開くと意外にも大繁盛してしまい、捜査に支障をきたし…という作品だ。刑事たちが庶民的なチキン料理店を開くという設定がとてもユニーク。
強面の刑事が慣れないチキン料理を作り、接客に奮闘する姿が可笑しくて新宿の劇場では笑いが何度も起きた。刑事が言う、「包丁で腕を切るし、熱い油が掛かってしまう」とか「(今日は)78組の客を接客したのよ」という台詞には妙なリアルさを感じてしまった。

韓国ではチキンはよく食べられているし、退職した人が(韓国の退職は早い)、自己資金が少なくて済むので、この商売を始めることが多い。しかも、あんまり上手く行かないそうだ。そう言えば韓国で大ベストセラーになったフェミニズム小説「82年生まれ、キム・ジヨン」でも、公務員だった父親が退職後に始めた商売の一つで、やはり失敗して転業する。

映画はラスト、この5人の刑事と麻薬グループの一味の大乱闘になる。そこで、このチームのメンバーの出自が明らかになり(例えば体の大きいデカは柔道の選手、女性刑事はムエタイの選手など)、その個性が現れたアクションが見られるのはまずまず面白い。
俳優の演技では、班長を演じるリュ・スンリョンが渋い味を出し、怖い中にもふっと人間味を出すところが魅力的だ。しかし、トータルして傑作・秀作と言えるほどのレベルに至っていないのでは、というのが率直な感想だ。

さて、ならば、歴代1位の作品「バトル・オーシャン」はどうか。
邦題が「バトル・オーシャン」という現代劇風タイトルになっているが、16世紀の末、豊臣秀吉が朝鮮出兵をした時に、朝鮮半島南西沖の島で、イ・スンシン率いる朝鮮海軍の13艘の船が日本の330艘の船と闘った海上アクション映画である。イ・スンシンは日本の侵略を防いだため、現代でも韓国一の英雄である。映画の原題は「鳴梁」(「鳴く海」という意味)。

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日本では一般の劇場公開はなかった。DVDは110分の長さであり、実際の映画は126分の作品だ。何らかの理由で(倭軍の残虐シーンなどのカットだろうか?)短くされた分、ドラマ部分がやや分かりにくい感じになっているのが残念だ。そのため、正直感動に至らない。
しかしながら、映画の後半からラストまで描かれる両軍の死闘は、一気に押しまくる演出で圧倒される。両軍相乱れての白兵戦の描写も力があるし、潮の流れが変わって、耐えに耐えた朝鮮の船が反撃に出るシーンも映像的によく描かれている。渦巻く潮の流れが鳴くような音を出すので、「鳴梁」という原題になっている。

名優チェ・ミンシクが演じるイ・スンシンは重厚にして人間的弱さや優しさも出している。日本人の武将の描き方はそれほどの違和感はない。韓国人俳優が日本語を喋るところも評価していいだろう。武将の中では実在の伊予水軍の来島通総(くるしまみちふさ)が一番存在感がある。台詞が少なくやや一本調子ではあるが、ラストの壮絶な死に方(少し笑ってしまうが)も映画的だ。これを、やはり、リュ・スンリョンが演じていて、納得の演技だ。

(by 新村豊三)

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