映画の雑誌と本 (1)「映画秘宝」と、短編映画「きょうのできごと a day in the home」

コロナ対策で映画館が休館になったのがツライ。私のような映画ファンは手足がもがれたような気持ちだ。人と会って自由に話が出来ないのもストレスたまる。
先日、映画仲間からZoomを使ってWEB飲み会をやらないかという誘いがあり、おっかなびっくり、おずおずと参加したが(パソコン苦手の私でも結構簡単に設定出来た)、四国や関西や東京に住む11名の仲間と久しぶりに映画の話で盛り上がった。午後7時から始めて、飲食をしながら、4時間続いた程だ。
その時の話で見たいなあと思ったのは、三島由紀夫が東大全共闘の学生と討論を行った記録映画だ。ああ、早く映画館が再開されて、この映画を見る日が来てほしい。

今回から数回、映画雑誌や本について書こうと思う。
第一回の今回は「映画秘宝」だ。

実は、この雑誌は、今まで買ってちゃんと読んだことがなかった。調べてみたら、一番売れていた映画雑誌との事で愕然とした。近く取り上げる予定の「キネマ旬報」より売れていたなんて! 自分は、世の同世代の男性と違って映画しか趣味がないが、一番権威のある(?)雑誌を読んでいるつもりが、実はこの雑誌もマイナーだったのだ。

映画秘宝

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さて、4月22日に復刊し、その日のうちに買った「映画秘宝」を読んだ感想だ。(すぐに売り切れた店が多かったそうで、ネットでは高値が付いた由)。
A3判の雑誌はガーンとデカい。表紙の右上、「読めば絶対に免疫力がupする映画雑誌」という文字が泣かせる(同時に、愉快なデタラメさが伝わる)。
表紙は2015年の傑作活劇「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。横に並ぶ「2010年代 不屈の傑作映画200!」という黄色のデカい文字が凄い。

復刊号の特集は「2010年代のベスト映画」だが、キネマ旬報みたいに多数の選者が選んでいるのでなく、いろんな分野を一人で選んでいるのがユニークだ。その分野の中には、「100日後も生きるワニ映画PARADISE!」、「SOS!NO EXIT!緊急事態宣言
MOVIES!」なんてものもある。相当な偏愛と言うべきか、愛情のほとばしりがあると言うべきか。しかし、「町山智浩の元気が出る映画!!」はかなり真っ当なことが書いてあり、読ませる。
ワイルド、猥雑、パワフルでぶっ飛んでいて活力がある。(それは、映画の持つ大事な魅力に重なる)。ただ、「2010年代ベストクリーチャー」が出てくるところは生理的に気持ち悪いし、「近未来バイオレンス映画 BEST武装ファッション10選」は、勝手にやってたら、という感想しかないが。

実は一番面白くホッとしたのが、何故か登場した「映画芸術」編集長の荒井晴彦に、映画秘宝の編集長が日本映画のベスト&ワーストを訊ねる記事だった。話題にされる20本の映画のほとんどを見ていたせいかもしれないが、大変に面白い。荒井節が炸裂して、今年読んだあらゆる映画記事の中で一番ではないか。ワーストは舌鋒鋭く悪口を言うが、ベストは自分の作品ばっかりを挙げるなど、そのゆるさと人間味がいい。

『きょうのできごと a day in the home』監督:行定勲 出演:柄本佑 高良健吾 浅香航大 有村架純ほか

「きょうのできごと a day in the home」監督:行定勲 出演:柄本佑 高良健吾 有村架純ほか

さて、好きな映画を一本。何と、ZoomによるWEB飲みを題材にして、若手俳優(柄本祐、高良健吾ら)6人を集めて短編映画にし、ネットで配信され始めた映画がある。我が行定勲監督の「きょうのできごと a day in the home」だ。

『きょうのできごと a day in the home』

WEB飲み会を開催している若い男5人と女性1人をZoomと同じ固定画面で捉え,おしゃべりが続くだけのシンプルな映画。しかし、映画好きにはクスクス笑えるシーンが沢山あり、ラストが成程なあ、上手いなあと思う作りだ。

我々普通の者は今のコロナの事態を前にオロオロしているだけだが、行定監督は今の状況を映画にしてしまい、メッセージも打ち出している!
アイデアも凄いが、短時間で作り上げるフットワークの軽さと速さに驚く。蛇足ながら、紅一点の有村架純が色っぽい。

(by 新村豊三)

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