1970年代の映画3本「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」「銀河鉄道999」「さらば夏の光よ」

続けて3本、1970年代製作の映画を観た。それぞれ面白い。

まず、一本目は映画ファンの間で静かな話題になっているベルギーの女性監督シャンタル・アケルマンの「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」(昭和50年 1975)(昨年日本公開)。
2年前、10年ごとに行われる英国映画協会(BFI)の選出で「市民ケーン」などを抜いて史上ベストワンになった!

監督:シャンタル・アケルマン 出演:デルフィーヌ・セイリグ ジャン・ドゥコルト他

監督:シャンタル・アケルマン 出演:デルフィーヌ・セイリグ ジャン・ドゥコルト他

タイトルも長いが上映時間は何と200分。しかも、高校生の息子と二人でブリュッセルに暮らす主婦ジャンヌの生活―すなわち、家事、息子との交わりなどを、固定カメラで淡々と映すだけだ。2日半の時間のスパンである。
もう、前半は、これは映画じゃない、勘弁してくれと言いたい位単調な描写が続く。台所でジャガイモの皮をむき、ゆでる。コーヒーの豆を挽き、お湯を注いで飲む。午後は部屋に持ち込まれた赤ちゃんのお守りをする。カメラは主人公が外に出る時だけ外に出て、ロングで彼女を捉える。郵便局に行ったり買い物に行ったり、結構、切れ目ない家事を行う。

70年代なので、まだ、ちゃんとしたスーパーもない時代か、コンビニもなく、食事は自分で作る環境だ。3日目になると、こちらも延々と続く家事の描写に慣れたせいか、あるいは、その見ている家事の行為そのものが面白いからか、興味を感じながら見ていることに気づく。例えば、肉をこねてパン粉をまぶす(ハンバーグか?)、そのこねる過程そのものに一種の美のようなものを感じる。
この映画が「映画的」に上手いのは、冒頭5分で、ある訪問者が来るのを見せることだ。全く説明がないので、何なんだ、今日はどうなる、と思わせ、静かなサスペンスを生み出している。
ネタバレになるので、ラストを含めてポイントは書けない。しかし、この映画、やはり、フェミニズム的視点で理解する映画なのだろうな。
この独特のスタイルで撮った監督は当時弱冠25歳だ。

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2本目は、先日松本零士氏が亡くなり、池袋の文芸座の大スクリーンで上映された「銀河鉄道999」(昭和54年 1979)。実は初めて見たのだが、後半大変な面白さを感じた。
この映画、この年の日本映画興行収入1位だが、当時私は大学の最終年。70年代の地方からの上京組には娯楽や文化に使うお金なんて、ほとんど無くて見てなかった。ラジオはあったから、ゴダイゴの唄う主題歌はよく耳にしていたが。
そんなノスタルジーは別にして、この映画、日本アニメの傑作ではないか。同じ79年末の「ルパン3世 カリオストロの城」レベルだ(これは80年頃名画座で見ている。その面白さに仰天)。
改めて記す必要もないかもしれないが、未来の話で、母を殺された少年の星野鉄郎は、母によく似た謎の美女メーテルと、機関車で引かれ空を飛ぶ列車「銀河鉄道999」に乗って、「機械の体をくれる星」アンドロメダを目指す。
大スクリーンで、「銀河鉄道999」が広大な宇宙をバックに汽笛をならし、動輪を轟かせ、ダイナミックに進んでいく姿は迫力がある。鉄郎とメーテルはいろいろな惑星に寄りながら、宇宙海賊ハーロックなどの助けを受けて、機械星を爆破する。後半は話も面白いし、構図や色彩もなかなかいい。
ロマンがあり、冒険がある。そして、母を恋しく思う気持、年上の女性への淡い恋なども巧みに盛り込まれる。ラストの別れのシーンの後、力強いゴダイゴの主題歌がここぞとばかり流れるところも見事にキマる。全体として、音楽が流行歌風だが、それもご愛敬だ。

「さらば夏の光よ」監督:山根成之 出演:郷ひろみ 秋吉久美子ほか

「さらば夏の光よ」監督:山根成之 出演:郷ひろみ 秋吉久美子ほか

好きな映画をもう一本! 配信で見たが、郷ひろみと秋吉久美子の「さらば夏の光よ」(昭和51年 1976)も切なさを呼び起こす秀作。基本は男二人、女一人の三角関係ものだ。
父親のいない東京出身の郷は、早稲田を目指す受験生の友人と、アパートで一緒に暮らしているが、仕事先のロッテリア(原宿のようだ)で、ここで働く九州出身の秋吉と知り合う。
秋吉が郷に気があるものの、郷が秋吉を友人に譲ったこと、秋吉が仕事先の上司から暴行されかけることから悲劇が生まれる…
そんな切ないドラマを、郷がとても自然にナイーブに好演している。本当に存在感がある。スターなのに坊主頭になる。そして、秋吉久美子は可愛い。嗚呼、秋吉22歳、郷21歳。
あの時代を生きた者には、映画に映る安アパート、着ている服装、人々の顔つき、全てが懐かしい。

(by 新村豊三)

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