先日、ストリートピアノでショパンのノクターン2番を弾いて以来、ロシアピアニズム(重力奏法)なるものに興味を持つようになりました。
昔のピアノは今と比べると鍵盤が軽く、また、宮廷サロンのような小さなスペースで演奏されていました。そこでは、手の筋肉を鍛えて、指を高い位置に上げてから下ろすという方法で正確に速く弾く、ハイフィンガー奏法が用いられ、西欧でその技術がたいへん発展しました。
一方、東欧では、ピアノの演奏技術が西欧よりも遅れていました。
その代わりに、手の筋肉を殆ど使わず、指を上げることはせず、腕や体の重さで指を下ろして弾く、重力奏法(重量奏法、脱力奏法とも言います)という技術が生まれました。
時は進み、ピアノは進化して鍵盤は重くなり、また、コンサートホールのような大きな会場で演奏されることが多くなりました。
筋力だけで音を出すハイフィンガー奏法は、近くではよく聞こえるけれど遠くまでは響かない、重力奏法は、ホールの隅々までよく響く、また、ハイフィンガー奏法は長時間弾くと腕が痛くなったり、炎症をおこしたりしますが、重量奏法は、腕への負担が少ない、そのような理由から、現在、活躍しているピアニストの殆どが重力奏法を用いており、高齢になっても腕が衰えないのは、この奏法に理由があったということです。
しかし、私が子どもの頃の日本では、ピアノといえば西ヨーロッパのイメージが強かったために、ピアノ教室ではハイフィンガー奏法を教えるのが一般的でした。
この気持ちは、子どもの頃、歯医者さんは虫歯になったら行けば良いと教えられていたのが、大人になって、虫歯にならないために歯医者に行く、予防歯科という考え方を知り、
「最初から、予防歯科を教えてほしかった!」
と感じたのと似ています。
何気なく探してみると、こんな公演を見つけました。
(津川聡子 作)
*編集後記* by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟
津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第143話 ピアノの話 前篇 ~ロシアピアニズム〜」いかがでしたでしょうか。
そう言えば、大人になってピアノをまた弾き始めた友人が「脱力ができてない」と先生に指摘され、何もかも鍛え直さねば、と言っていたのを思い出しました。そして、行った! 聴いた!! のですね、サトコさん。ダニエル・ハリトーノフ オール・ショパンプログラムへ。全曲ショパンですから、たっぷり堪能できたことでしょう。我らがサトコさんのことですから、見て、聴いて、観察して、独自の奏法を開発してしまうのでは?
次回、プロのピアニストの脱力ぶりをお伝えしますよ(たぶん)、乞うご期待!!
「やっとこ! サトコ なう」へのご感想・作者へのメッセージは、こちらからどしどしお待ちしております。次回もどうぞお楽しみに♪