版画とちいさなおはなし(35)
「鏡」 大鴉が、古道具屋に魔鏡を持ち込んだ。 「売った金で、孫にタブレットPCを買ってやろうと思ってね。こんな鏡よりもよっぽどいろんなことができるから」 「なるほど。動作確認させ...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
服部奈々子の版画と芳納珪のちいさなおはなしをお届けします。
「鏡」 大鴉が、古道具屋に魔鏡を持ち込んだ。 「売った金で、孫にタブレットPCを買ってやろうと思ってね。こんな鏡よりもよっぽどいろんなことができるから」 「なるほど。動作確認させ...
「星へ帰る」 双眼鏡を覗くと、分厚い水晶の中の鯨がよく見えた。 観測所のガイドが説明する。 ——水晶は少しずつ成長していますが、全体的に沈下しています。 鯨は前進しており、空は...
まひるの月 馬にまたがった将軍の像は、その街のシンボルだった。 太陽がギラギラと照りつける夏の日、馬の上から将軍がいなくなった。 街の歴史愛好家がそれに気づき、数人の仲間と共に将...
翼馬(つばさうま) かすみがかかった山に翼馬が立つと、一年が始まる。 翼馬は朝日とともに姿を現し、日暮れまでじっとそこにいる。 私たちは翼馬に見守られながら畑を耕し、種をまき...
「きのこわたり」 リスモドキは草原を見渡した。 すべてのきのこは充分に成長し、表面はしっかりと固まって いる。待ちすぎると、きのこは中から腐り始め、やがてつぶれてしまう。 前に渡...
「われらの王が目覚めるとき」白い羽毛がふわふわと舞い落ちてきた。丘のてっぺんの木立の中から、ふーっ、 ふーっ、と息をするようにふきだしている。
お昼ごはんが終わっても、なかなか午後になりませんでした。何がどうというのではないですけれど、時間が止まってしまったようなのです。ウサギが森の時計を見に行くと、時計当番のキツネのすがたが見えず、時計の上に、いつもは木の上にいるトカゲが乗っていました。
「やっぱオレたちに求められてるのは迫力だよなあ。ガオってやってさ、そんでもってシュッ、とさ。シュッ、と」 「そうだなあ」ガリガリ。ガリ。
「飛行木(ひこうき)」 あらしの翌朝、森の奥に大きな木が倒れていた。 子狼がその上に乗って遊んでいる と、ノスリの長老がやってきた。 「これこれ、この木は森を守っていた神聖な木な...
「ふたごのはりねずみ」 ハーが起きているとき、ミーは寝ています。 ミーが起きているとき、ハーは寝ています。 起きているハーが、寝ているミーにいいました。