版画とちいさなおはなし(25)
「鳥の郵便屋さん」 呼び鈴が鳴ったので窓の外を見ると、帽子をかぶり、グリーンの制服を着た配達人が立っていた。 ドアを開けると、彼は封書を差し出して言った。 「書留です。ここに...
「鳥の郵便屋さん」 呼び鈴が鳴ったので窓の外を見ると、帽子をかぶり、グリーンの制服を着た配達人が立っていた。 ドアを開けると、彼は封書を差し出して言った。 「書留です。ここに...
「水辺にて」 公園でぼんやり池を眺めていると、向こう岸をゴイサギが歩いているのが見えた。 私はそれが似非鳥(えせどり)であると気づいた。他の鳥を見るとそっくりに姿を変える鳥だ。 ゴ...
雲笛(くもぶえ) うちの雲がいよいよ古くなってきたようで、歩くとたまに陥没したりする。 危ないので、新しいのと取り替えることにした。 雲笛を使うのは十年ぶりだ。大きく息を吸って、思い...
〜〜〜 十二年前 〜〜〜 パンの耳で元気を取り戻したジョーは、ジャックを連れて、とある場所へ向かった。 その場所へ行くと、建物の前を念入りに掃除している青年がいた。長身で、全身真っ...
ジョーがドアに身を寄せると、ドアの向こうの何者かも同じようにした気配があった。 「『銀のさざ波』という曲を知っているか?」 その声は、最初にジョーをこの家へ連れてきた茶トラ、シマジのものだ...
じゃばっ! 大量の水とともに、硬い床に転がった。 ジョーは喉の奥から水をゲボっと吐き出し、夢中で叫んだ。 「ケースを開けろ! その中へこいつを入れるんだ! 早く!」 目の中に水が流...
ヌシは、恐ろしいスピードで上がってくる。 光沢のない黒い身体をたえず伸び縮みさせ、たくさんの目を青く光らせて。 ひゅん! 何かが耳元をかすめた。 水流に揉まれて、すでに方向感覚はほ...
ジャックが耳をピクリとさせたのと同時に、磁天が上を見た。そして苦い表情でつぶやいた。 「もう始まるのか」 ジョーの耳にもそれは聞こえていた。 さわさわさわ...... さわさわさ...
ジョーは血相を変えて磁天を見た。 「機能を停止って、どういうことだ」 磁天は腕を組み、落ち着き払って答えた。 「オマエが元の身体を離れて農場に来てからすでに三日たっている。今...
ラヴクラフトは一部に熱狂的なファンを持つ幻想ホラー小説家です。読んでみると、この人はとにかく海と海の生き物が死ぬほど怖いらしいということがわかります。代表作『インスマウスの影』では、魚っぽい人間の容貌(インスマウス面《づら》)の不気味さが執拗に描かれます。