長編ファンタジー小説『水神様の舟』発売のお知らせ

前作『天ノ狗』以来3年ぶりの長編が刊行されます。

ヤッター!

「水神様の舟」芳納珪 光文社文庫

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タイトルは『水神様の舟』。読み方は「すいじんさまのふね」です。「水神」には「みずがみ」という読み方もありますが、「すいじん」のほうがなんとなく強そうに感じませんか? 私はこの物語に現れる「水神」に、強くて不気味なイメージを与えたかったのです。

ストーリーは、広大な湖に生活を依存しながらも大多数の人が水を恐れる世界で、潜水という特殊能力を持った職業人である主人公が、湖の奥深くに棲むと伝えられる水神様の謎に迫っていくというもの。

実は当初の設定では、湖ではなく海、水神様ではなく人魚でした。人魚といえばアンデルセンの童話のような美しい女性のイメージが主流ですが、私の頭にあったのは「ノストラダムスの人魚」。下のイラストをご覧ください。

人魚(魚人?)

これは、1970年代に大ベストセラーとなり、当時の少年少女を恐怖のドン底に陥れた『ノストラダムスの大予言』(五島勉著)の図版の再現です。ノストラダムスの「人魚が現れる」という予言が見事に的中した証拠の「ニュース写真」として紹介されていました。が、これは、かのルネ・マグリットの「共同発明」という絵であることが判明しています。五島氏の本の図版ではかなり粗い白黒画像だったので、転載のまた転載かもしれません。その粗さが不気味さを際立たせており、子どもだった私の柔らかな脳に人生を左右するほどのトラウマを植え付けました。

不気味な人魚(魚人?)の図像は、後年知ったハワード・フィリップス・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)の強迫観念的な深海世界のイメージにつながります。

ラヴクラフトをご存知でしょうか?

Lovecraft という名前が印象的ですね。日本語に直すと「愛工」氏でしょうか。
それはともかく、ラヴクラフトは一部に熱狂的なファンを持つ幻想ホラー小説家です。読んでみると、この人はとにかく海と海の生き物が死ぬほど怖いらしいということがわかります。代表作『インスマウスの影』では、魚っぽい人間の容貌(インスマウス面《づら》)の不気味さが執拗に描かれます。

はじめて読んだときは、なんでそんなに魚が怖いのかわからず、世界観がピンと来なかったのですが、ラヴクラフトの作風について書いたある論評の中に「海産物に対する恐怖」という表現を見つけてから、俄然気になり出しました。

海産物というと、連想するのはデパートの高級食品売り場です。海苔に昆布に鰹節。アワビにスルメに新巻鮭。
歴史学者の網野善彦によると、日本列島においてこうした海産物を神饌として捧げる風習は律令制度よりも古くからあり、今日の贈答品の源流となっているそうです。
そんなことから、物語の舞台に日本の漁村のイメージが加わっていきました。

ノストラダムスとラヴクラフトと網野善彦。この恐るべき三位一体から生まれたファンタジーが『水神様の舟』です。
その結果どうなったかは、読んでのお楽しみ。世にも稀な世界をご堪能ください。

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『水神様の舟』
著者:芳納珪
イラスト:六七質
光文社キャラクター文庫
11月16日(火)発売

*発売記念トークライブをやります!

11月21日(日)20:00〜22:00
創作よもやま話「水神様の舟」発売記念トーク!
https://www.facebook.com/events/219238973681945

ホテル暴風雨の連載仲間のクレーン謙さんと、『水神様の舟』を中心に、ファンタジーの創作について語ります。参加費無料。事前申込不要。気軽にご参加ください。

『天ノ狗』(アメノキツネ)もよろしくお願いします!

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※新刊告知のため連載『山猫夜想曲』は1回お休みさせていただきます。どうぞ次回11月18日の更新をお待ちくださいませ。