風向きが変わって、またあの曲が聞こえてきた。
ぼくがうんと小さいときから、毎年同じ時期、同じ曲。
笛のようでもあり、人の声のようでもある。
ここいらでは聞いたことのないメロディ。
いったい誰が奏でているのだろう。
ずっと知りたくて仕方なかった。
ぼくは、決心した。今からたしかめにいく。もう大人だから。
あの木のむこうまで、歩いていけるんだ。
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
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