
版画とちいさなおはなし(28)
「やっぱオレたちに求められてるのは迫力だよなあ。ガオってやってさ、そんでもってシュッ、とさ。シュッ、と」 「そうだなあ」ガリガリ。ガリ。
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
「やっぱオレたちに求められてるのは迫力だよなあ。ガオってやってさ、そんでもってシュッ、とさ。シュッ、と」 「そうだなあ」ガリガリ。ガリ。
「飛行木(ひこうき)」 あらしの翌朝、森の奥に大きな木が倒れていた。 子狼がその上に乗って遊んでいる と、ノスリの長老がやってきた。 「これこれ、この木は森を守っていた神聖な木な...
「ふたごのはりねずみ」 ハーが起きているとき、ミーは寝ています。 ミーが起きているとき、ハーは寝ています。 起きているハーが、寝ているミーにいいました。
「鳥の郵便屋さん」 呼び鈴が鳴ったので窓の外を見ると、帽子をかぶり、グリーンの制服を着た配達人が立っていた。 ドアを開けると、彼は封書を差し出して言った。 「書留です。ここに...
「水辺にて」 公園でぼんやり池を眺めていると、向こう岸をゴイサギが歩いているのが見えた。 私はそれが似非鳥(えせどり)であると気づいた。他の鳥を見るとそっくりに姿を変える鳥だ。 ゴ...
雲笛(くもぶえ) うちの雲がいよいよ古くなってきたようで、歩くとたまに陥没したりする。 危ないので、新しいのと取り替えることにした。 雲笛を使うのは十年ぶりだ。大きく息を吸って、思い...
〜〜〜 十二年前 〜〜〜 パンの耳で元気を取り戻したジョーは、ジャックを連れて、とある場所へ向かった。 その場所へ行くと、建物の前を念入りに掃除している青年がいた。長身で、全身真っ...
ジョーがドアに身を寄せると、ドアの向こうの何者かも同じようにした気配があった。 「『銀のさざ波』という曲を知っているか?」 その声は、最初にジョーをこの家へ連れてきた茶トラ、シマジのものだ...
じゃばっ! 大量の水とともに、硬い床に転がった。 ジョーは喉の奥から水をゲボっと吐き出し、夢中で叫んだ。 「ケースを開けろ! その中へこいつを入れるんだ! 早く!」 目の中に水が流...
ヌシは、恐ろしいスピードで上がってくる。 光沢のない黒い身体をたえず伸び縮みさせ、たくさんの目を青く光らせて。 ひゅん! 何かが耳元をかすめた。 水流に揉まれて、すでに方向感覚はほ...