翼馬(つばさうま)
かすみがかかった山に翼馬が立つと、一年が始まる。
翼馬は朝日とともに姿を現し、日暮れまでじっとそこにいる。
私たちは翼馬に見守られながら畑を耕し、種をまき、草をとる。
翼馬は、長雨が続くと雨の神様のもとへ、日照りが続くと日の神様のもとへ飛んでいって交渉する。
作物がみのり、刈り入れが無事に終わると、村では祭りが行われる。
輪になって踊る私たちの上を、翼馬は光の粉をまきちらしながら旋回し、山のかなたへ去っていく。
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
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