ライオンキング超実写版2019 リアルな動物が人間語をしゃべる違和感

「ライオンキング超実写版」を見た。

最大の残念ポイントは主人公シンバが大人になってしまうことだろう。
子どもシンバのどうしようもないかわいさと比べると、大人になったシンバはなんというか「ただのライオン」である。それ以上でも以下でもない。
姿とともに声優もチェンジされるあのシーンで「ああ、もう子ライオンは見られないのか…」としょんぼりした気持ちになった観客はわたしだけではあるまい。

そんな感想を持つのも「超実写版」のせいである。
超実写版とは何か。実写ではなく従来のCGでもなく、VR空間を作り上げてその中でバーチャル撮影したと言う。よくわからない。よくわからないが、たしかに未体験のすばらしい映像だった。わたしの目には実写にしか見えなかった。動物はCGで背景は実写なのかと思ったら背景もすべてCGだそうだ。

ライオンのほかにもハイエナやマンドリル、イボイノシシ、ミーアキャット、アフリカに住むたくさんの動物たちが登場する。いずれも細部までリアルで、本物の動物が演技しているようである。CGだからどんなことでもさせられるだろうに、動作も表情もなるべく実際にありそうな範囲にとどめ、本物感を損なわないようにしている。

技術的には見事というしかない。しかしそれゆえ動物が人語をしゃべることに違和感があった。視覚と聴覚が一致しないのだ。画面にいる、あのライオンの子がしゃべっているという気がどうもしない。アニメなら人間のように口を動かせるが、リアルな動物では無理だ。構造が違うからたぶん不気味になってしまう。
あなたのうちの猫がとつぜん日本語をしゃべったら、どんな声であっても「うちのこじゃない!」と感じるだろう、それと一緒である。
超実写版が「本物の動物だ!」という感動と引き換えに捨てたものは間違いなくある。

さて、わたしはオリジナルアニメ版も舞台のミュージカルも見たことはない。初のライオンキング体験だった。それでもほぼ想像していたとおりに話は進んだ。ストーリーラインはそのくらい王道でわかりやすい。しかしわかりやすいから単純に楽しめばいいかというとそうでもない。むしろいろいろ考えさせられてしまった。

シンバの父、広大なプライドランドを治める偉大な王ムファサが語る「サークル・オブ・ライフ」とは何か。過酷な運命に一度は絶望したシンバが救われるハクナ・マタタとは何か。

それらについて次回書く。

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